花は儚く、そしてたくましい
「梅は咲いたか桜はまだかいな・・・」。日本では春を告げる花として梅や桜が代表的だが、イギリスではスミレが春のシンボルだという。シェイクスピア劇にも頻繁に登場するこの花は、清純で美しい女性に喩えられることが多い。「亡骸を埋めろ。美しい汚れを知らぬ妹のからだから、菫の花よ咲き出でよ!」。横たわるオフィーリアにレアティ−ズが祈りを込めて叫ぶシーンは印象的だ(「ハムレット」5幕1場)。花は美しい。けれど一方で、もろく、そして儚い。
「ハムレット」の花づくしの場面も有名だ。狂ったオフィーリアが歌いながら、王たちに花々を差し出す。摘みたてのスミレ、ローズマリー、パンジー、プリムローズ、ウイキョウ、デイジーなどが、それぞれの花言葉と重ねて手渡される。皮肉ともとれるこの場面だが、兄をハムレットと思い込むあたりがいっそう哀れを誘う。「これがローズマリー。ねぇお願い、私を忘れないで」。ローズマリーの花言葉は「変わらぬ愛」。
花は儚いが、たくましさも併せ持つ。シェイクスピアはそんなところに"花"と"女性"との共通点を見い出したのかもしれない。
儚くとも切なくとも、やはり花は、人に力を与える時に欠かせない。「冬物語」で花々を差し出しながらパーディタは言う。「あなたがたは、これからが人生の花盛りなのですから」。エネルギッシュな春は、もうすぐそこまで来ている。
※ パソコン障害のためコラムを更新できなかったことをお詫びします。
お陰さまで復旧できましたので、今後ともよろしくお願いします。
02・03・10 |