T
私の初めの罪(注:1)を、あなたは許して下さるだろうか。
それは私の罪であっても、はるか昔の罪である。
私が走り抜けて犯した罪、いつも後悔しながら、今もなお、
走りながら犯している罪を、許して下さるだろうか。
あなたが許されても、私が許されることはない。
なぜなら、私にはもっと多くの罪があるから。(注:2)
U
私の罪を入り口にして、私が他の者たちに犯させた
罪を、あなたは許して下さるだろうか。
私が一、二年前には避けてきたが、二十年もふけってきた
罪を、あなたは許して下さるだろうか。
あなたが許されても、私が許されることはない。
なぜなら、私にはもっと多くの罪があるから。
V
私が最後の糸を紡ぎ終えた時には、此の岸で
死に絶えてしまうのではないかと恐れている。
あなたご自身にかけて誓って下さい、私が死ぬ時には、あなたの御子が
いま輝いているように、これからも輝き続けると。
そうすれば、あなたが為されることで、私は許され、
恐れるものはもう何もないから。
【訳注】
ウォルトンは、『ダンの伝記』の初版(1640)にこの詩を載せており、ダンが重病であった時、1623年の作品としている。この詩は、出版された作品とは別の原詩がある。この詩にはダンに依頼されて、ジョン・ヒルトンが曲を付けている。
注:1 「初めの罪」、「はるか昔の罪」は、原罪を意味している。
注:2 原詩には、ダンの名前(Done)と妻のアン・モア(More)の名前が組み込まれている。翻訳には「私が」と「もっと多くの」として訳した。
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