キリストに捧げる讃美歌、作者が先年ドイツを旅するに当たって ジョン・ダンの部屋

 

私が乗る船がどんなに引き裂かれた船であっても、

その船は、私にとってはあなたの方舟の象徴です。

海がどんなに荒れて私を呑み込もうとも、その海水は

私にとって、あなたの血の象徴となります。 

たとえあなたが怒りの雲でそのお顔を隠されようとも、

その覆いの向こうにあるあなたの眼差しを知っています、 

時に、その眼差しがよそに向けられることはあっても、

決して軽蔑することはありません。


私はこの島国をあなたに捧げるとともに、

私が愛し、私を愛したすべての人々を捧げます。

これらの人々と私との間を、我々の海で隔てる時、

私の罪とあなたとの間を、あなたの海で隔てて下さい。

冬になれば、樹木の樹液は地下の根に下って行くように、

今、私は私の冬に向かって下って行きます。

そこでは、あなたのほかには何も、真の愛の不変の根

であるものはないと、私は知ります。

 

あなたも、あなたの宗教も、調和のとれた

魂の愛の調べを抑えることはなされないでしょう、

しかし、あなたは御自分だけを愛そうとなされる。主よ、

あなたは嫉妬深いので、私も嫉妬深くなっています。

私の魂を、多くのものを愛することから解放するまでは、

あなたは愛していないのです。自由を与える者は、自由を奪うのです。

ああ、私が誰を愛しても構わないと言われるのなら、

あなたは私を愛しておられないのです。

 

さあ、すべてのものに対する私の離縁状に捺印して下さい。

私は、あなたに対するより、他のものに愛の光を注いでいました。

若い頃、名誉や、才知や、昇進の望み(これらは偽りの恋人です)に

分散されていた愛を、あなたと結婚させて下さい。

祈りのためには、光が最も少ない教会こそ、一番適しています。

神のみを見るために、私は光から遠ざかります。

そして、嵐のような日々から逃れるために

永遠の夜を選びます。

 

【訳注】

ダンは、1619年5月から1620年1月まで、ドンカスター伯爵大使の使節団に、礼拝牧師としてドイツに随行した。これはその時の詩。

 

 

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ジョン・ダン全詩集訳 宗教詩