魂の遍歴について ジョン・ダンの部屋へへ

 

エリザベス・ドルリー嬢の敬虔なる死に当たって、この世における魂の不便の数々と、来世における彼女の高揚をここに思いを巡らす。

 

二周忌の歌 

 

遍歴の先駆け

 

ここでは二つの魂注:1が動いているので、(第三の)私の魂も

驚嘆と愛の歩調の足並みに合わせて動かなくてはならない。

この詩を捧げる(親愛なる乙女よ)あなたの魂は、

この死を免れない地球から、生命の至福へと動いた。

しかも動くこと止まらず、この世の最後の日に、

あなたの栄光の満願を見ることを望んでやまない。

それはあたかも、あなたがはるか彼方に見下ろす星が、

その場所にありながら、しかも常に動いているようなものだ。

どんな魂も(この土塊の重荷が詰められている間は)

途中までもあなたについて行くことができない。

それだけではなく、あなたの飛翔する姿さえ見ることができない。

私たちの思考よりはるかに速く進み、今や稲妻すらも遅く思える。

だが、天が我々から遠く離れてあるように、

あなたは、今は天高く飛んで行ってしまった。あなた以外のどんな魂が

あなたの喜びを伝えることができ、あの祝福された場所での

あなたの輝かしい日々の記録を語ることができようか。

私はあなたを(豊かな魂よ)羨み、あなたを羨ましく思う、

私はまだあなたの栄光を見ることができないけれども。

そして、あなたは(偉大な魂よ)彼女を追うのが

あまりにも速いので、誰もあなたのその速さについて行くことができない。

あまりにも遠くまで行くので、誰もそこまであなたについて行くことができない。

(そして、もしこの肉体が通行を妨げなければ、

彼女に追い付いていただろう)それゆえ私はあなたの飛翔に驚嘆するのだ。

低俗な連中の目がそれを見失って久しく、

今では、もっと目のよい人たちが、空を飛び、小さくなった

あなたの姿が見えることを自慢する。

だから、あなたが彼女の魂の遍歴を語るのは、

あなたご自身が崇高な遍歴をすることであり、

この世の亡骸から不滅の純粋な生命へと

昇って行くことである。

あなたの上昇する思いは、人の称賛には、

これ以上は相応しくないほど高く昇るが、

それでもなお、あなたはそれ以上のものを彼女に約束し、

この世をさまようかぎり、あなたは、毎年、新たな遍歴をする。

これからも昇り続けて下さい。そして、あなたの神を讃える言葉で

あなたのローラ注:2を褒め称え、あなたの歌を飾って下さい。

あなたのミューズは天上に頭を隠しているのだから、

雲の下に降りて来させてはならない。

そしてあの栄光に満ちた聖者たちが、

我々が地上で何を為し、何を歌っているかを知れば、

その行為、その歌が彼らを常に最高に満足させるだろう。

それは、彼らを祝福したあの恐るべき力を褒め称えるものであるから。

 

 

【訳注】

『魂の遍歴について』は、1612年に初めて出版された。

ダンは、1611年11月からドルリー家と大陸に向けて出発した。一行は、1611年11月から翌年の3月までフランスのアミアンに滞在し、パリやフランクフルトを訪れた。エリザベス・ドル―リーの死の記念日の歌は1611年12月には書かれていた。ダンは1612年4月までにその詩の非難に対して、フランスからイングランドの友人たちに弁明の手紙を送っている。

 

『遍歴の先駆け』は、ジョセフ・ホールが「ダンの『記念日の歌』への先駆け」を書いたと、ベン・ジョンソンがホーソンデンのドラモンドに語っている。この詩で、ホールはエリザベス・ドルリー嬢への讃歌と、彼女の死を謳うダンの詩への賛辞を送っている。

 

注:1 「二つの魂」とは、この詩の中で明らかになるように、エリザベス・ドルリーとダンの魂のことである。

注:2 ローラは、ペトラルカの最高作品である恋愛抒情詩『カンツォニエーレ』(1470)に歌われる永遠の女性の名前。

 

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ジョン・ダン全詩集訳 挽歌と葬送歌