エレジー 7 (教 育) ジョン・ダンの部屋トップへ戻る

 

生来無知で愚か、そんな君に愛の手ほどきを教えたのは僕だ、

だのに、詭弁を弄することでは、君は

僕より巧妙になった。愚かだった君は、理解していなかった、

眼や手が表現する神秘な意味を。

それに、溜め息の違いを聞き分けて、

これは偽物だ、あれは絶望の声だと言えなかった。

また、流れる涙をもってして、

死に至る熱病なのか、一時的な発熱なのか診断できなかった。

あのころ、僕は教えていなかった、花言葉を

どのようにうまく組み合わせ、

束ねたら、口に出すことなく胸の内を

無言のまま、お互いに伝えることができるかを。

あの頃のことを思い出してごらん、

どの求婚者に対しても君の言葉は、私のお友達のお許しがあれば、だった。

あの頃は、君の将来の夫が誰になるかを教えてくれたのは、

月並みなおまじないごっこだけが、君の恋の手ほどきだった。

それにその頃は、一時間かけて口説いても、君からは

一言にも満たない返事しかなく、それも途切れ途切れの、

細切れになった格言で、バラバラな文章だった。

君は義務に縛られていようとも彼のものではない、

彼は君を世間の共有地から切り離して、

誰からも見えない、誰も見えないところに君を囲い込むが、

君は僕のものだ。恋の手ほどきで

君を祝福の楽園に仕立て上げたのは僕だ。

君の優美さや立派な言葉は、僕がその創造主。

僕が知識と命の木を君に植えたのだ、

それを見も知らぬ者に味あわせるのか?哀れにも僕は

皿を作ってエナメルで着色までしたのに、ただのガラスで飲むのか?

蝋を溶かしたのは他のものに封印させるためだったのか?

仔馬を調教して乗れる段になったら、手放すことになるのか?

 

 

【訳注】

この詩には題名が付いていなかったが、「教育」の題名は、ヘレン・ガードナーによる。

 

 

 
 
   
ジョン・ダン全詩集訳 エレジー