さあ、おいで、奥さん、ひと汗かくまで
僕は精力余って、じっとしていられない。
敵同士のように互いに睨み合い、
一戦も交えず立ったままでいるのは疲れる。
その帯を解きなさい、それは銀河系のように輝いているが、
内にははるかに美しい世界が包まれている。
君が身に付けているそのきらびやかな胸当てを外しなさい、
そんなものはじろじろ見つめる人の眼から防ぐためのもの。
紐を解きなさい、君の時計が優しい音色で、
もう寝る時間ですよと、僕に告げているではないか。
果報者のコルセットも外すがいい、僕はそれが羨ましい、
いつでも君のそばにあって、そんなに近くにいられるのだから。
君がガウンを脱げば、かくも美しい眺めが現れる、
ひそかに退く山影から花咲く野辺が現れるように。
金属製の頭飾りをとって
君の頭に生える髪、王冠を見せてくれ。
さあ、靴を脱いで、安心して
この神聖な愛の神殿、柔らかな寝床に入っておいで。
天国の天使たちも、君と同じような白い衣裳で
人前に現れた。天使である君は、
マホメットの楽園(注:1)のような天国をもたらした。
悪魔も白い衣裳で現れるが、
悪魔と天使を容易に見分けることができるのは、
悪魔は僕らの髪を逆立たせるが、天使は僕らの肉を立たせる。
僕に手でまさぐる許可を与え、
前に、後ろに、上へ、下へと行かせてくれ。
ああ、僕のアメリカ、僕の新大陸、
僕の王国、一人だけが住む最も安全なところ、
僕の大切な宝石、僕の帝国、
僕はここに君を発見することができ、なんと幸せなことか。
ここに拘束されるということは、自由になるということ、
だからここに手を置き、封印するとしよう。
全裸の姿、すべての悦びはそこにある。
魂が肉体を脱ぎ棄てるように、肉体も衣服を脱ぎ棄ててこそ、
喜びを満喫できる。君たち女が用いる宝石は
アトランタの林檎(注:2)のようなもの、男たちの目の前に投げれば
愚か者の目は宝石に心を奪われ、
俗物的な魂は、女ではなく、女の持ち物を求める。
このように着飾った女というものは
俗人向けの絵本か、豪華な表紙の本のようなもの。
女というものは神秘なる書物、僕らはただ
(女たちが与えてくれる恩寵が僕らに箔をつける)
現れたものを見るだけである。だから、僕にもわかるように、
産婆にしたように、とっくりと、
ありのままの君を見せてくれ。すべて脱いで、そう、その白い布地も。
ここでは、悔悛も、純潔も必要ない。
君の手本として、僕がまず裸になろう。そうすれば、
君を覆うのに必要なのは、男の肉体だけ。
【訳注】
この詩も、1633年の版で出版許可が下りなかった一つで、最初の出版は、1654年の’The Harmony of the Muses: or The Gentlemans and Ladies Choisest Recreation’で、ダンの詩集には1669年に初めて収められた。
注:1 マホメットの楽園は、肉欲の悦びで満たされているという。
注:2 俊足の女神アトランタは、求婚者に自分と駆け較べをして勝った者と結婚すると言ったが、誰も敵わなかった。ところがヒッポメネースがアフロディーテから黄金の林檎を三個手に入れ、彼が走るとき、その林檎を投げるとアトランタは林檎を拾うのに夢中になり、走るのを忘れてしまう。
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