嫉妬よ、聞くがよい。憚りなく僕のジュリアの話を
おまえに聞かせよう、一度として嫉妬されたことがない彼女のことを。
悪口の中に胆汁を吐き、中傷で
血管を膨らませ、地獄をも見下すような、
そんな行為を彼女は繰り返したのだ。あらゆる手を尽くしては、
最も親しい友人の胸からでさえ内密の話を引き出し、
それに(さらに悪いことには)
結婚生活にも嫉妬の種を植え込んだので、彼女自身の子どもにさえ
敵意の雨が降り注ぐ。この怪物のような流儀を
繰り返すのは、どうすればよいか、まるで貴い評判を
食いつぶすようなものだ。神さま、どうか
彼女が僕の穏やかな忠告に耳を傾け、その半分でも悪行を
慎んでくれますように。いま、マンチュアン(注:1)が生きていたら、
あの雌犬マスチフを使って、このキマイラ(注:2)の怪物を
彼のペンで描いたことだろう。キマイラは、怒りに燃えた
火の眼を持っており、その怒りで欲望を煽り、
声は夜烏のようで、その不吉な鳴き声は、
新たな災いのほかには何も生み出さない。
彼女が吐き出す息ときたら、泉を枯らす
テナルスの洞窟(注:3)の毒汁のようだ。とはいえ、それほど多くはないが。
どういうわけか、彼女の手は、自分の腹を満たすためより、
他人の食べ物を奪うために使われる。
だが、彼女の心はオルクス(注:4)のように、悪意の軍団、
まだ形をなしていない数知れぬ
呪いの言葉、未完成の悪巧み、
まだ仕上げられていない悪口雑言、汚れた思想、
醜い粗探し、見え透いた嘘、
避けられない過ち、自責の嫌悪でいっぱいだ。
こういったものが、太陽の光線に集まる塵埃のように、
いまにも生まれそうに彼女の胸に群がっている。
彼女の半分を描くだけでも赤面するが、
どんな毒も彼女の半分ほども悪性ではないと言おう。
【訳注】
1635年、初出。ヘレン・ガードナーはこの詩をダンの作品ではないとする。
注:1 マンチュアン(1447−1516)は、イタリアのスペイン系ユダヤ人の詩人。第四牧歌詩『女の災い』で女性の性(さが)を諷刺し、そのことで彼は女嫌いの評判を取った。
注:2 キマイラは、頭がライオン、胴はヤギ、尾はヘビの、火を吐くギリシア神話の怪獣。
注:3 テナルスの洞窟は、黄泉の国への通路。ギリシア南部、ペロポネソス半島南部の古代国家ラコニアにあった。ヘラクレスが地獄の番犬ケルベロスを地獄から連れ出した時に通った洞窟で、そこでケルベロスが吐いた唾から毒草のアコニット(トリカブトの一種)が生え、その汁には破壊の力があった。
注:4 オルクスはローマ神話の地獄のことで、ギリシア神話のハーデスに相当する。 |