7 閑話休題―ジョン・ダンをめぐって

 

 これまで、この連載を読んでいただいた方々が、少しでもダンに興味を持っていただくことができれば、それに勝る喜びはないと思っている。

ここで小休止として本題から外れて、私が所有しているダンに関する書籍(と言えるほどの品物ではないけれど)について、一部はコメントを付けて読者の方の参考までに紹介しようと思います。言うなれば、私のダンの全目録のようなものです。

 

(1) 詩集関係から(詩集と散文集の併本を含む)

1. John Donne/ The Complete English Poems, Edited by A. J. Smith (Firstpublished, 1971, Rephrinted with revised Further Reading, 1996, Penguin Classics)

現在取り組んでいる翻訳に使用しているジョン・ダンの全詩集で、巻末の注釈は、質、量ともに充実している。表記は現代語のスペルに直されている。『唄とソネット』の配列が、タイトルのA,B, C順に並べられているのも特徴の一つである。

ダンの詩を本格的に読んでみようという人には、入手もしやすいので、お勧めの本。

 

2.Complete English Poems/ John Donne, Edited by C. A. Patrides (First published in Everyman by J.M. Dent 1985, New edition 1994, Everyman)

翻訳のサブ・テクストとして用いている。スペルは旧表記となっている。『唄とソネット』の配列は1635年の版に準拠している。注釈は各頁に脚注として載せている関係で、スミス編のものに較べると少ないが、翻訳に当たっての比較対象に役立っている。

 

3. The Collected Poems of John Donne, Edited by Roy Boot (Wordsworth Poetry Library, 2002)

詩の選集で、注釈は巻末にある。年表が、三列に表記されて、左端にダンの年譜、中央にダンの著作、右端にその他の出来事を記している。

 

4. John Donne’s Poetry, Edited by Donald R. Dickson (Norton Company, 2007)

詩の選集で、注釈は脚注。全部で430ページほどあるが、半分以上にベン・ジョンソンを初めとして、現代に至る批評家の評論文が掲載されているのが特徴。

 

5. John Donne, Selected Poems, Oxford Student Texts, Edited by Richard Gill (Oxford University Press,1990)

160ページほどの選集。その名の通り学生を対象にした選集で、採録された詩の数は多くはないが、各詩の注釈と研究の手引きが詳しいので、初心者向けとしては最適。ページ数の関係もあって、諷刺詩や宗教詩、書簡詩や、「魂の遍歴」などの長詩が入っていない。

 

6. Donne, Poetical Works, Edited by Herbert J. C. Grierson (Oxford University Press, First published 1933, Reprinted 1979)

グリアソン編というだけで自分にとっては価値があったので、古本でアメリカから取り寄せて買ったが、まだ手を付けていない。

 

7. The Poems of John Donne, from the Text of the Edition of 1633, Volume I, by James Russell Lowell, Biblio Life)

1633年のダンの詩集の復刻版のコピーだが、スペルは現代語表記。資料用として、アマゾンにて購入。巻末に評釈がある。

 

8. John Donne, The Major Works, Edited by John Carey (Oxford World Classics, 1990)

その名の通り、詩と散文の代表作を(推定)年代順に並べているのが特徴。散文には、パラドックスや、書簡、説教集などが含まれている。巻末の注釈を含めて480ページほどある。年代順にダンの足跡を知るには格好の書である。

 

9. John Donne, Dean of St. Pole’s, Complete Poetry and Selected Prose, Edited by John Hayward (London: Nonesuch Press, 1932)

ロンドンの古本屋で35ポンドで購入(2010年)。「全詩集」と「パラドックスと諸問題」、「イグナティウスとその秘密会議」、「書簡」、「説教集」などの散文選集で、全部で750ページを超える。

 

10. John Donne, Poems, Selected by A.H. Ninham (Joe’s Press, 1994)

Introductionを入れても40ページほどの小冊子。インターネットで中身も分からずに買ってしまった本。

 

11. 『対訳/ジョン・ダン詩集』湯浅信之編(岩波文庫、2004年第2刷)

「唄とソネット」、「書簡詩」、「諷刺詩」、「宗教詩」、「エレジー」、「一周忌の歌/二周忌の歌」など網羅的にあり、ダンの詩の全体像を俯瞰するのに手軽な一冊。

 

12. 『ジョン・ダン全詩集』湯浅信之訳 (名古屋大学出版会、1996年)

知る限りにおいて、ダンの詩の全訳はこれまでのところ、この一冊のみだと思う。

13. 古典文庫『エレジー・唄とソネット』ジョン・ダン 河村錠一郎訳(思潮社、1977年)

 

14. 『ダン詩集』星野徹訳(思潮社、1968年)

思潮社古典選書シリーズの一冊。内容は「エレジー」と「唄とソネット」の一部。

 

(2)書簡、説教集、論文

1. Selected Letters, Edited by P.M. Oliver (Carcanet Press, 2002)

ダンの手紙は全部で200通余り残っているが、そのうち154通はダンの長男のジョンが2巻の書簡集としてまとめて出版している。この本はその中の一部の選集である。

 

2. John Donne’s Sermons on the Psalms and Gospels, Edited by Evelyn. M. Simpson (University of California Press, 1963, Renewed 1991, Second Paperback Printing 2003)

イギリスに出張した際に買ったもので、本文の片端に、説教の内容に関連する聖書の典拠の書と、その章、節が記されているので大変参考になる。

 

3. E.M. サリヴァン編『自殺論』吉田幸子/久野幸子/岡村眞紀子/齊藤美和訳(英宝社、2008年)

本邦初訳。原書も手に入りにくいだけでなく、たとえ手に入っても自分の力では読みこなせないと思うので重宝する本。

 

(3)伝記関係

1. Lives of Donne, Wotton, Hooker, Herbert and Sanderson, by Izaak Walton (Methuen and Co. 1895)

復刻版のコピー。アイザック・ウォルトン(1593−1683)は、『釣魚大全』の著者としても有名。ダンと同時代に生きて直接見聞きしたダンについての最初の伝記。但し、内容的には、ウォルトンが聖職者としてのダンを崇拝するあまりに、聖職者としてのダンに焦点が当てられており、詩人としてのダンを知るには少し物足りない。

 

2. The Life and Letters of John Donne, by Edmund Gosse (William Heinemann, 1899)

 アマゾンのBiblio Life 復刻版のコピー。ダンの伝記と、その書簡を通して、ダンの人物像に迫っている。

 

3. John Donne, The Reformed Soul, by John Stubbs (W.W. Norton & company, 2007)

ダンの伝記として私が初めて本格的に読んだ500ページにわたる大著。

著者ジョン・スタッブスは1997年生まれで、弱冠27歳でこの本を著わし、それによって2004年にRoyal Society of Literature Jerwood Awardを受賞している。オックスフォード大学で英文学、ケンブリッジ大学でルネサンス文学を学び、2005年に博士号を取得。

 

4. John Donne, Man of Flesh and Spirit, by David L. Edwards (William B. Eerdmans Publishing Company, 2001)

これも350ページほどの大著。ジョン・スタッブスのものよりハードな感じで、読んだ印象が残っていない。詩を完訳した後、再読しようと思っている。

 

(4)その他、ダンに関する評論などの本

1. Student Guide to John Donne, by Sean Haldane (Greenwich Exchange, 1996, Reprinted 2003)

学生のための手引きで、ダンの伝記から作品論まで簡潔に、網羅的にあり、ページ数も100ページ足らずで手頃な本。

 

2. Analysing Texts/ John Donne: Poems, by Joe Nutt (Palgrave Macmillan, 1999)

自分の性分として、詩を分析的に読むよりは感覚的に読む方なので、自分なりに理解できるまでは、あまりこのような類いの本を先走って読まないようにしているので、一部読んだだけで、今のところ手元においているだけである。

 

3. John Donne/ Life, Mind and Art, by John Carey (Faber and Faber, 1981)

アマゾンを通して古本で、15,000円以上出して買ったのだが、その後、同じアマゾンで2,000円程度で売り出されていたのでがっかりしたことがある。これも今のところ、積読。

 

4. 『ジョン・ダンの説教〜遍歴と復活〜』楠瀬敏彦著 (京都あぽろん社、1990年)

 

5. 『パラドックスの詩人/ジョン・ダン』岡村眞紀子著 (英宝社、2007年)

 

6. 『ジョン・ダンの異端と正統』吉田幸子著 (英宝社、2000年)

 

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