高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
 
   こまつ座 第149回公演 『夢の泪』       No. 2024-010

 この日、午後2時から5時まで座・高円寺で『ハムレット』を観て、その足で紀伊國屋サザンシアターに駆けつけた。6時の開演時間を6時半と勘違いして、会場には6時前ギリギリに到着。時々このようなチョンボをする。

 『夢の泪』は、栗山民也が新国立劇場の芸術監督になった2000年に、2000/2001シーズンのラインアップとして「20世紀で何を得て、何を失ったか」を考えるシリーズ「時代と記憶」に5人の作家に新作依頼をし、その一人であった井上ひさしが「東京裁判三部作」の第一作として『夢の裂け目』を01年に、続いて03年に『夢の泪』が初演され、2010年5月に同じく新国立劇場で再演された。今回の公演は久し振りの再演で、こまつ座としては初演となる。自分は、初演、再演とも観ており、今回の公演が3回目の観劇となる。
 初演、再演、そして今回の出演者を比較してみると(キャストは03年、10年、そして今回の上演順)、
 弁護士伊藤菊治=角野卓造、辻萬長、ラサール石井
 弁護士伊藤秋子=三田和代、三田和代、秋山菜津子
 その娘伊藤永子=藤谷美紀、大和田美帆、瀬戸さおり
 弁護士竹上玲吉=犬塚弘、木場勝己、久保酎吉
 法律事務所事務員・夜学生田中正=高橋克実、小林隆、粕谷吉洋
 ナンシー岡本=熊谷真実、土井裕子、藤谷理子
 チェリー富士山=キムラ緑子、春風ひとみ、板垣桃子
 片岡組組長代理で学生片岡健=福本伸一、福本伸一、前田旺志郎
 ビル小笠原=石田圭祐、石田圭祐、土屋佑壱

 自分の感想を、「the座」から演出者の栗山民也の言葉と出演者の言葉を抜き書きで代用する。
 「このような記憶についての作品を上演し続けなければならない。何故なら演劇は消費物ではなく、記憶を刻む芸術なのだから」(栗山民也)
 「この作品、一回読んだだけでは深いところまでは分からない。何回か読んで、自分が立ってやってみてやっと理解したことも多い」(ラサール石井)
 「一番ドキッとしたのは、広島に原爆が落ちた後、すぐに日本の役所が重要な文書を全て焼き捨てていたと秋子が話す場面」(秋山菜津子)
 「この『夢の泪』の台本を最初から最後まで全部書き写してみた。一度自分の手で書くことで、井上ひさしさんの言葉が自分の言葉のように心の中まで沁み込んできた」(瀬戸さおり)
 「井上さんの芝居ってどれも今とリンクするところがある。誰の台詞の中にも伝えるべき重要な言葉がいくつもある。その意味をしっかり伝えることこそが、この芝居の使命でもある」(久保酎吉)
 「ナンシーとチェリーにしてみれば、世界が注目する東京裁判と同じように、むしろ自分たちの問題が大事なんだと思います」(藤谷理子)


作/井上ひさし、演出/栗山民也
音楽/クルト・ヴァイル、リチャード・ロジャーズ、ハリー・パー=デイヴィス、宇野誠一郎
音楽監督・編曲/久米大作、美術/長田佳代子
4月6日(土)18時開演、紀伊國屋サザンシアター、チケット:7000円
座席:8列13番、プログラム(the座):1200円

 

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