高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
 
    こまつ座・40周年 第146回公演 『きらめく星座』        No. 2023-010

 こまつ座40周年記念公演「昭和庶民伝三部作」としての第一作。
 防毒マスクをかぶって空襲避難訓練の場からの始まりで、この劇の内容を思い出す。
 その観劇記録を見てみると、2009年、14年、17年と、これまでに三度見ている。
 出演者で記憶に残っているのは、オデオン堂主人小笠原信吉役の久保酎吉と、オデオン堂の居住者で広告文案家竹田慶介役の木場勝己。手持ちの『座the』を引き出して調べてみると、2009年の公演であったが、2014年の公演でもこの二人は出演していたのが観劇日記の記録で確かめられた。
 今回も信吉役は久保酎吉で変わらないが、竹田さん役は大鷹明良、信吉の妻ふじには松岡依都美。そして憲兵伍長権藤三郎を演じた木村靖司も2014年の公演にも出演していたが記憶していなかったので、今回、その印象がかえって強く感じられた。
 音楽学校に通う学生森本君は、ずっと変わらず後藤浩明。そのほかの出演者は、前回、前々回といずれもその都度変って、今回は、信吉の長女みさおに瀬戸さおり、長男正一に村井良大、傷痍軍人でみさおの夫源次郎に粟野史浩、ほかに電報配達の若者とその友人・魚屋の店員に高倉直人と小比類巻諒介で、10名の出演。
 見るたびに何かいつも新しい発見があるが、今回は、正一が九州の炭鉱で目にした強制徴用された朝鮮人の話に、今日韓で問題となっている徴用工問題と重なり、劇中の正一と同じかつての日本のありように憤りを感じた。
 最後、オデオン堂が徴発されて居住者がバラバラに別れることになるが、信吉と妻のふじは、妻の実家長崎に身を寄せることになるが、その場面の舞台演出に、彼らを待っている運命、長崎の原爆投下を不気味な予兆を覚えた。
 劇中で歌の場面がいくつもあり、音楽劇としての面白さを今回も楽しんだ。
 上演時間は、休憩15分をはさんで、3時間10分。

 

作/井上ひさし、演出/栗山民也、音楽/宇野誠一郎、美術/石井強司
4月20日(木)13時開演、チケット:8800円、座席:6列10番

 

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