高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
 
   可児市文化創造センター ala Collectionシリーズ vol. 13  
          『百日紅、午後四時』               
No. 2022-025

 タイトルがそのままこのドラマのキーワードとなっている。
 JR中央線の東京郊外の、百日紅が庭に咲く、昭和の香りが残る家。
 夏の日のある日、父や母を看取り、5年前には夫を事故で亡くし、その家に一人住む一美が妹夫婦や弟、息子たちを呼び集める。
 みなが集まっても、姉の一美はどこかへ出かけたままで不在。
 一同は一美がみなを呼び集めたわけをそれぞれが憶測し、家を処分する話ではないかとか、その財産分けなど勝手なことを想像するが、そんな憶測はみな外れて、一美が一緒に住むことを考えているパートナーの紹介であった。そのことについて一同が腑に落ちない状態のところへ、一人の若い女性が突然訪ねてくる。
 その若い女性は、事故で亡くなった夫の仏前で突然泣き出してしまい、そのいわくありげな様子に一美の心は揺れ動く。その女性はすべてを話すつもりが、取り乱してしまってそのまま帰ってしまう。
 一美の心の乱れと先行きの関心がサスペンスとなって、ドラマの起伏が興味を呼ぶ展開をなしていく。
 彼女の後日の訪問ですべての誤解が氷解し、一同は平穏を取り戻すという、話の縦筋はこんなものだが、一美の妹、弟、息子たちも、それぞれのドラマを抱えており、それが会話の端々から覗いて見える。
 このドラマのキーワードである「午後四時」は、人生百年としてそれを時計に喩えるなら、66歳のヒロインの一美は午後4時にあたる。各々がそれぞれ自分の年齢を時計の時間に合わせて換算すると、人生、まだまだこれからだと、明るく前を向く。人生百年の時代の生き方を心に思い起させるドラマである。
 出演は、ヒロインの一美(66歳)に市毛良枝、一美のパートナーの多田拓郎(67歳)に陰山泰、弟の昊司(63歳)に福本伸一、妹の鬼頭美代子(58歳)に弘中麻紀、その夫の康道(64歳)に朝倉伸二、一美の息子広志(38歳)に瓜生和成、謎の女性(26歳)に平体まひろの8人。
 上演時間は、休憩なしで2時間。


作・演出/鈴木 聡、美術/秋山光洋
10月20日(木)14時開演、14時開演、吉祥寺シアター、
チケット:5000円、座席:G列3番

 

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