高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
 
   流山児★事務所公演 『美しきものの伝説』            No. 2022-024

 始まりもそうであったが、最後の「歌」の場面は宮本研の原作にあったかしら?!と思った。始まりは後にして、最後に歌われる歌、「花は咲いたか」は原作にあったという記憶がまったくなかった。
 それで、劇団青年座162回公演、『美しきものの伝説』の上演台本を引っ張り出して見てみるとちゃんと載っていて、自分の記憶の貧しさに落胆!始まりのイメージの記憶は、野枝がパラソルをさして登場する場面であったが、台本を見ると、バイオリンを弾く幽然坊と演歌師の突然坊が歌を歌う場面から始まっている。
 今回の演出では、幽然坊はラッパを鳴らし、突然坊はギターを弾きながら歌を歌うという違いだけで、基本的には何も変わっていない。「我々日本の青年は、未だかつて彼の強権に対して何等の確執をも醸したことが無い」に始まる石川啄木の文言は、流山児祥のナレーションで語られるが、これも全く記憶がなかったので、今回の演出は原作を解体した新たな試みかと思ってしまった。しかし、台本を読み返してみると、演出の違いはあっても台詞は基本的には原作に忠実なものであったことが分かった。
 記憶がまったくなかっただけに、白いスーツ姿の大杉と同じく白い衣装の野枝が出かけようとする最後のシーンの後、出演者全員が同じく白い衣装を着て「花は咲いたか」の歌を繰り返し歌う最後は圧巻としか言いようのない感動的なものであった。
 主演のクロポトキンこと大杉栄に田島亮、野枝に山丸莉菜、四分六こと堺利彦に上田和弘、ほか総勢17名。
 上演時間は、途中10分間の休憩を入れて、2時間35分。


作/宮本研、芸術監督/流山児祥、演出/西沢栄治、音楽/諏訪創
10月9日(日)14時開演、下北沢・小劇場B1、
チケット:(通し券)4000円、座席:E列3番

 

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