高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
 
   第49回 東京第7回 映像劇団テンアンツ公演
     『板の上の二人と三人そして一人』 (福組)        
 No. 2022-008

 「梅」「鶯」「松」「鶴」の4チームと1回限りの「福」による休日なしの14日間27公演。
 1回限りの「福」は休演にする予定であった特別座組みで、自分は自己都合でこの1回限りの公演を観劇することになった。
 この作品はテンアンツ初期の作品ということで、劇団主宰者で作者・演出者の上西雄大にとって、東京上演として公演することになったことに感無量の思いがあったようだ。
 「板の上」とは舞台のことで、「二人」とは漫才コンビ、「三人」は女性漫才トリオで、いずれも仲間割れからコンビ解消になっていたものが天使の計らいでコンビ復活となる人情噺的な物語で、コンビ復活までの過程がちょっぴり感動的な話でもある。
 「ナマセン・ヤキセン」の人気漫才コンビが、ナマセンの傷害事件をきっかけにコンビを解消し、ナマセンは芸能界から追放のような形で芸能界から追い出され、今は失職中でボロアパートの家賃も滞納し、明日は送電も止められるという惨めな境遇にある。そんなナマセンのところに、今はテレビで人気のかつてのコンビ、ヤキセンがコンビ復活を申し出るが、ナマセンはそれを無下に断る。が、後日ヤキセンの妻マリナが訪ねてきて、ヤキセンが心臓の病で余命いくばくもないことを告げる。ヤキセンは「板の上」でかつてのコンビ、ナマセンとの漫才で最期を迎えたいと願っていたのだった。
 女性漫才トリオの「ナインティンワン」は、かつて仲間から外されたたチーコがトラックの交通事故にあって瀕死の状態の所、天使の計らいで三人が等しく寿命を分け合うということでチーコの命が助かり、トリオ復活となる。
 最後は、板の上で最期を遂げたヤキセンの遺言で漫才から「一人漫談」で舞台を続けているナマセンの50周年記念公演の場で、その時までには漫才トリオも同日に一緒に亡くなっており、ヤキセンは上級天使となってナマセンの前に姿を現す。
 最初に現れた天使も、もともとは漫才師で、今は居酒屋の店主になっているクニオとコンビを組んでいたのが、自分が運転する車のスピードの出し過ぎで事故って死んでしまい、平天使の間は人には見えないのが出世して上級天使となって姿を見せることができるようになったものである。
 ナマセン・ヤキセンの主筋にいくつもの脇筋を取り入れ、間には女性トリオの漫才師役に実際に漫才をやらす場面もあり、演じる役者の面白さとおかしみで大いに笑いを誘うグッド・エンターテインメントで、自分も特に後半部で大いに笑った。両隣の女性などは始終笑っていて、笑いをこらえかねているほどであった。
 特別座組みの今回の公演では、ヤキセンを演じる木庭博光は文字通り今回だけの1回こっきりの役で、夜の部の「松」の公演ではナマセンを演じた上西雄大がヤキセンを演じ、天使の徳竹未夏とマリナの古川藍が役を入れ替えて演じるという。その他のキャストもチームごとにキャスティングが異なり、複数の役を演じる役者は台詞を覚えるのが大変だなと思ってしまう。
 出演者はいずれも一癖も二癖もあるような役者で、その演技を見ているだけで楽しく、できれば全部の座組みが見られることに越したことはないが、なかなかそうはいかないのが残念。
「福」の出演者は総勢23名。ちなみに座組みによって出演者数は異なっている。
 上演時間は途中休憩をはさんで、3時間。

 

作・演出/上西雄大
4月26日(火)13時開演、下北沢・小劇場B1、チケット:5900円、全席自由席

 

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