高木登 観劇日記2021年別館 目次ページへ
 
   加藤健一事務所・第110回公演 THE SHOW MUST GO ON   No. 2021-018
 

 1937年のブロードウェイでの初演の原題が'ROOM SERVICE'、1994年の加藤健一事務所でのタイトルは'It's SHOW TIME'、そして今回のタイトルが'THE SHOW MUST GO ON'(『ショーは続けなくてはならない』)。
 昨年初めから長く続くこのコロナ感染禍で演劇界も疲弊しきっている中、だからこそ、まさにショーは続けられなくてはならない、時機を得たタイトルだと思う。
 平日のマチネでも加藤健一事務所の公演は、本多劇場ではふつうほぼ満席状態であるが、今回は見渡したところ、3分の2足らずの入り、そしてそのほとんどが高齢者。
 加藤健一が上演する喜劇ではほとんどいつも笑いで満足して帰ることができるのだが、今回もしっかり笑えた。
 ブロードウェイの二流のホテルに居住する演劇プロデューサーのゴードン・ミラー(加藤健一)が、22名もの役者たちを自分のつけで同じホテルに滞在させ、新人作家の脚本の稽古もすでに仕上がり、あとは初日を迎えるだけというところまできて、このショービジネスを成功させるためにただ一つ欠けているのは、多額の資金を提供するスポンサーだけ。このあたりの話は、アメリカにおけるショービジネスのありようを実感させられる。
 舞台はそのゴードンがホテルの支配人グリブル(奥村洋治)から請求書を突き付けられ、今にも追い出されようとしている矢先、この作品の新人作家デーヴィス(千葉健玖)がゴードンを頼って田舎から出て来て、彼もまたゴードンの居候となる。
 そこからまた次から次へとピンチが迫って来て、それを潜り抜けたかと思うと、再び畳みかけての次なるピンチ。
 そこへ1万5千ドルの資金を提供するというスポンサーの代理人サイモン・ジェンキンズ(林次樹)なる人物が登場し、最大のピンチを免れたかと思うと、彼が降り出した小切手を現金化できるのは5日後。
 しかもゴタゴタ事件のあおりでその小切手は支払い停止とされてしまうが、ゴードンはその5日間を利用して舞台に必要なものを、その小切手を預かったホテルの責任者グレゴリー・ワグナー(新井康弘)名義で取り揃えてしまい、いよいよ初日を迎えたその日、ここでもまた災難が突発!
 しかし最後の最後では、すべてが丸く収まるハッピーエンドで、途中でハラハラドキドキしたフラストレーションもすべて吹っ飛んでしまう。
 主演の加藤健一をはじめ、加藤健一事務所ではなじみの出演者である新井康弘をはじめ、演出家ハリー・ビニヨンを演じる土屋良太、ホテルの支配人グリブルの奥村洋治、ロシア人のホテルで元役者のウェイターのサーシャや医師のグラス、上院議員のブレークの3役を演じる辻親八、ジェンキンズのほか、デーヴィスのタイプライターの代金支払い取立人ホガースや銀行員を演じる林次樹、ゴードンの劇団の舞台監督イングランドの伊原農、女優のクリスティンの加藤忍、ホテルの事務員ヒルダ・マニーの岡崎可奈など、総勢10名の出演者の顔ぶれがすごい!!
 ショー・マスト・ゴー・オン!!だ。
 上演時間は、途中15分の休憩を入れて、2時間20分。

 

作/ジョン・マーレイ、アレン・ボレッツ、訳/小田島恒志、演出/堤泰之、美術/乗峯雅寛
9月2日(木)14時開演、下北沢・本多劇場、チケット:5500円、座席:B列17番

 

>>別館トップページへ