高木登 観劇日記2019年 トップページへ
 
    劇団月のシナリオ第2回公演 『海と日傘』             No. 2019-027
 

 松田正隆の魅力に取りつかれたのは、木山事務所のプロデュース公演で初めて観たこの『海と日傘』であった。
 九州の懐かしい方言と、間を置いた静かな語り口に惹き込まれていったことを思い出す。
 その公演を観たのはもう今から20年以上前の1997年6月、俳優座劇場であった。
 演出は木山事務所の末松利文、出演は本田次布、水野ゆふ、三谷昇、堀内美希、菊池章友、他。
 演出した末松がプログラムに寄稿した小文のタイトル、「空気と風を演出する」と、編集者の小堀純の評論「<死>の向こうに在る、丸ごとの<生>-松田正隆のかなしく、おかしく、やさしい世界>」のタイトルは、この劇のすべてを説明していて何も加えることはない。あとは、ただもう観客としてその空気を共にするだけで十分である。
 前回の『牡丹燈籠』の公演の時、次にこの作品を上演すると予告されてあったのでずっと楽しみにしていた。
 A、Bの2班による上演で、自分が観たのはB班の部。
 意外な出演者で最も驚き、感銘を受けたのは、珍しい楽器を弾く演雄者とだけしか知らなかった、彼の本名から「キトーちゃん」と呼んでいる鬼京芋孫が、意外な演技力と台詞の語り口調で、相方の瀬戸山の妻を演じた門田洋子との共演の息が合っていて、この二人の掛け合いの台詞を楽しませてもらった。
 その他の出演は、主人公で作家の佐伯に有馬郭恭、その妻直子に染谷亜矢子、編集者の青年吉岡に飯田荘平、多田久子に宮崎いづみ。
 かなしく、悲しく、哀しく、愛しく、おかしく、やさしい世界をたっぷりと満喫させてくれる舞台であった。
 上演時間は、休憩なしで1時間50分。


作/松田正隆、演出/清家栄一
9月15日(日)13時開演、シアターグリーン BASE THEATER、チケット:2000円


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