高木登 観劇日記2019年 トップページへ
 
    こまつ座 第129回公演 『日の浦姫物語』             No. 2019-026
 

 台風15号関東地方直撃の影響による交通網の乱れのため、開演が10分遅れ。座席もそのためか前方部でも空席が目立った。
 説教聖の語りの場面と物語の場面を紗幕や幕の代わりの3、4層の格子状の蔀戸を上下させることでこの劇の二層構造を効果的に表出。
 『日の浦姫物語』を最初に読んだとき、この劇はまさしくシェイクスピアてきパロディだと思った。
 この作品のテーマとなっている近親相姦はトーマス・マンの『選ばれし人』や『今昔説話抄』、またギリシャ悲劇『オイディプス王』を模倣しているだけでなく、文学座のための書下ろしということで、ヒロインの日の浦姫を演じる杉村春子の代表作『女の一生』の中の有名な台詞を劇中語らせるという諧謔性を含んでいて、思わずにんまりさせられる。
 文学座のための書下ろしであったこともあってか、こまつ座として初めて上演する今回も16名の出演者のうち主演の4名を除く12名が文学座所属の俳優。
 説教聖の辻萬長、三味線弾きの女の毬谷友子、劇中のヒロイン日の浦姫の朝海ひかる、そして稲若と魚名(太郎)の二役を平埜生成の文学座以外の出演者。
 文学座からはベテラン、中堅、若手の俳優が出演し、藤原宗親役のたかお鷹は井上ひさしの劇でもなじみの出演者で、自分としてはこのたかお鷹とこまつ座の辻萬長が一番印象に残る演技・台詞であった。
 この作品については初演時からテーマである近親相姦を中心にして色んなことが語られているが、当て書きにされたヒロイン役の杉村春子はそのとき72歳であったというのは驚きであった。
 近親相姦については日本の国の成り立ちからしてイザナギ、イザナミの二神の近親相姦によるものであるということからも、日本国という同質性、近親相姦的国家というものを考えさせられる。
 上演時間は、途中15分の休憩をはさんで3時間。
 終演後、鵜山仁のアフタートーク。 


作/井上ひさし、演出/鵜山 仁、音楽/宇野誠一郎、美術/乗峯雅寛
9月9日(月)13時開演、紀伊國屋サザンシアター、
チケット:8300円、座席:10列14番


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