高木登 観劇日記2019年 トップページへ
 
    東京サウンドプロダクション主催 『背信』           No. 2019-020
 

 内容と展開はチラシのキャッチ・フレーズ―親友の妻を愛する男。夫の親友を愛する妻。親友と妻の関係を知る夫。エンディングから始まる―に集約される。
 離婚を決心した親友の妻エマとその恋人であったジェリーが2年ぶりに再会したところから始まる。
 二人の仲はすでに終わっているが、エマは離婚が決まった翌日、ジェリーに連絡しそのことを知らせる。
 離婚の原因はエマの夫ロバートに愛人がいたことが分かり、エマも成り行きからジェリーとの仲を夫に話したという。それを聞いたジェリーは、親友であるロバートとの関係からひどく狼狽し、苦しみ、ロバートに会う。
 二人はこれまでにも昼食を一緒にしたりして常に会っている間であるが、ジェリーはロバートにエマとの離婚の話を持ち出し、エマが自分との関係を話したことを確認するが、ロバートが言うには、エマがジェリーとの関係を話したのは昨夜の事ではなく、4、5年前のことだと言う。
 そして、舞台はこの時点から少しずつ過去にさかのぼって展開されていき、最後はエマとジェリーの初めての出会い、すなわち、ジェリーがロバートとエマの結婚式の付き添い役をした時にまでさかのぼって、そこでエンディングとなる。
 ロバートは出版社の社長でジェリーは新人発掘とその才能を見出すのに優れた編集者で、二人はお互いにその才能を認め合った関係の親友である。
 ロバートは4年も前から自分の妻と親友であるジェリーの関係を知っていて、その知っていることを全く覚られずに付き合ってきたことになる。
 タイトルの「背信」が示すものは、親友を裏切ったジェリーにあるのか、それとも二人の関係を知った後も、妻やジェリーとまったく変わらず接してきたロバートにあるのか、その不条理性がジェリーに喜劇的悲劇性を感じさせる。
 出演は、ロバートに井上倫宏、ジェリーに高橋和久、エマに樋口泰子、給仕役に菊地真之。
 上演時間は、90分。
 あいにくの天気のなかであったが、すし詰めの満席であった。


作/ハロルド・ピンター、翻訳/喜志哲雄、演出/磯村 純、音楽/和田 啓、美術/阿部一郎
7月4日(木)14時開演、中野・テルプシコール、チケット:3800円


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