高木登 観劇日記2019年 トップページへ
 
    文学座公演 『ガラスの動物園』                 No. 2019-018
 

これまでにも何度か観ている作品だが、観劇の内容を記録していないのが残念である。
 骨格がきっちりしていているので、展開の内容より登場人物を演じる出演者の個性がどこまでこの作品の登場人物と近似するかにかかってくると思うのだが、その点に於いては、主人公で語り手であるトムを演じる亀田佳明とその母親アマンダを演じる塩田朋子の演技が印象強く感じられた。
 文学座の演出では登場のない父親の存在が、はね橋式に舞台上方に持ち上げられる紗幕の大きな額縁に描かれた帽子をかぶった父親の肖像が、劇全体を支配しているのが印象的であった。
 舞台上手前方に置かれたガラスの動物園は存在感があるものの、ローラとの心理的関係が今一つ希薄に感じられ物足りなさがあった。
 アマンダが、靴の倉庫会社で一緒に働いているハイスクール時代からの友人ジムを食事に招待した時のアマンダの衣装の演出は抜群に注目を引き、観客席からも笑いがかなり出た。
 内容も、展開もよく分かっている劇だけに、淡々と受け入れられたのだが、それは自分に取って、プラスでもあるが、先が見えているだけにマイナスにも左右してくる危険があった。
 そこをどうやって演技で惹き込んでいくかがこの劇の見どころともなると思うのだが、それは先に書いたように、自分には少し淡々として感じられた。が、それは必ずしも悪い意味でなく、安心して観ることが出来たということでもある。
 トムとアマンダ以外のキャストは、ローラに永宝千晶、ジムに池田倫太郎。
 上演時間は、途中休憩15分を挟んで、2時間25分。


作/テネシー・ウィリアムズ、訳/小田島恒志、演出/高橋正德、美術/乗峯雅寛
6月28日(金)18時30分開演、東京芸術劇場シアターウェスト、ケット:4000円、座席:H列7番


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