高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   Live Up Capsules公演 『見晴らす丘の紳士』        No. 2018-007
 

K君が出演するというのでとりあえず予約したものの、内容も何も観劇当日まで知らないままで、開演前のマエセツではじめて渋沢栄一の物語だと知った。
この劇のタイトルになっている王子の飛鳥山は、渋沢栄一が住んでいた処ということで、ここ王子の北とぴあ15階にあるペガサスホールの待合ロビーからは、スカイツリーまではるか遠く見渡せる。
作・演出の村田裕子が「ご挨拶」で「私には『渋沢栄一』という人がどうも良く分からないのです」と書いているが、この劇を観終わった感想がまさにその言葉通りで、渋沢栄一という人物をどのように評価すればよいか解らなくなった。そこで、おそまきながらウィキペディアでその略歴をみた。
500以上の会社を起業し資本主義の父とも言われているが、「私利を追わず公益を図る」ということで、岩崎弥太郎の三菱や、三井高福も三井、安田善次郎の安田財閥といったような「渋沢財閥」は作らなかったという。
渋沢栄一なる人物がよく解らない理由は、彼は色々な企業を起業するが自分では直接かかわることはせず、それがもとで経営が行き詰る会社の話が劇中に沢山出てくることで、彼は成功者なのか失敗者なのか、よく分からなくなるところにもあるようだ。
Live Up Capsulesについては、昨年1月に観た『スパイの口紅』のチラシに「近現代の日本を軸に、市井に生きる人々を通して今の日本に通じる問題を抉り出す作品」とあったが、この作品もその流れに沿ったもので、作者の焦点のあてどころが面白く、現代の写し鏡を思わせる台詞も多々あった。
出演は、渋沢栄一に、昨年の『スパイに口紅』で佐藤佐吉賞2017の主演男優賞を得た宮原将護、渋沢書生役を山形敏之、渋沢と商売で競い合う岩崎弥太郎に菊地真之、ほか弓削郎、桂弘、遠藤綱幸、鈴木大倫、藤代海、山田隼平などが劇中の色々な人物を演じる。
劇は役者たちの動きがスピード感にあふれて緊張感があり、それぞれが演じる人物像に見ごたえがあるものであった。
上演時間は90分。

作・演出/村田裕子、3月10日(土)14時開演
王子、北とぴあ・ペガサスホール、チケット:3500円、全席自由席


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