高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   こまつ座&世田谷パブリックシアター公演 『シャンハイムーン』  No. 2018-006
 

『シャンハイムーン』を初めて観たのは2010年2月、こまつ座第89回公演で、主演者はじめ出演者全員の記憶も残っていないので今回は初めて観る気持であった。
井上ひさしの戯曲はシェイクスピアと同じ感覚で読んでおり、こまつ座の公演は可能な限りほとんどすべて観に行くようにしているのでストーリーそのものは大体分かっているが、これまで舞台を観たことがない作品や、ストーリーを覚えていない作品については、手持ちの『井上ひさし全芝居』で予め読むようにしていて、この『シャンハイムーン』も久しぶりだったので読み返して舞台を観た。
井上ひさしの舞台は原作に忠実に再現されるが、今回のように演出者も出演者も美術担当者も異なる場合はまったく新鮮な気持で観ることが出来る。
前回の観劇日記はただ記録だけで感想は何も残していないので比較ができないのが少し残念。やはり少しでも感想は残しておくべきだと痛感する。
今回の公演はこまつ座と世田谷パブリックシアターとの提携公演ということで、世田谷パブリックシアターの芸術監督の野村萬斎が魯迅役を演じ、魯迅の妻(第二夫人)許広平を広末涼子、彼を支援する内山書店の主人内山完造を辻萬長、その妻みきを鷲尾真知子、医師の須藤五百三を山崎一、歯科医の奥田愛三を土屋佑壱が演じた。
笑気ガスの後遺症で魯迅が人物誤認症に続いて失語症になるが、その時の失語の仕方が野村萬斎の演技では自然なイメージではなく一種の様式性を感じさせるもので、その演技には美的な型を観る思いであった。
演技面で迫力を感じたのは、医師首藤を演じる山崎一、最前列のほぼ中央の席だったので、彼が鼻水を垂らして涙を浮かべている表情まで観ることが出来、演技とはいえ、感動的な気持にさせられた。
広末涼子は、これまで映画でしか見たことがなく、その映画では少女ぽさを感じていたのだが、舞台では大人の演技で最初は彼女だと気づかず、個人的な感想だがその落差に驚かされた。
こまつ座の看板俳優と言ってもよい辻萬長は、出演しているだけで自分には満足、期待通りの演技を楽しませてもらった。
こまつ座の舞台は出演者のアンサンブルがとってもよく、今回もそのアンサンブルを楽しませてもらった。
ちなみに前回の演出は丹野郁弓、美術は島次郎、出演は魯迅に村井国夫、許広平に有森也実、内山完造に小嶋尚樹、妻みきに増子倭文江、須藤五百三に梨本謙次郎、奥田愛三に土屋良太であった。
 

作/井上ひさし、演出/栗山民也、音楽/宇野誠一郎、美術/二村周作
3月5日(月)13時30分開演、世田谷パブリックシアター
チケット:(S席)8600円、座席:1階A列15番


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