高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   新国立劇場プレビュー公演 『スカイライト』          No. 2018-044
 

小川絵梨子が新国立劇場の演劇芸術監督就任後初めて演出するシリーズ3作目で、この日はプレビュー初日で開演前に監督の挨拶があり、新国立劇場としてプレビューは初めての試みであり、しかも2日間のプレビューの後、3日間劇場を閉めて更に稽古を続けた後本番を迎えるという。
出演者も内容もまったく事前にチェックしないままこの劇を観たので、台詞の応酬が激しく劇の内容を追うのに神経をかなり費やし、緊張の連続であった。
登場人物は、わずか3人。
しかも出演者の顔と名前を知っていたのは文学座の浅野雅博だけで、あとの二人は帰ってからチラシを見なおしてみて初めて知った。
ヒロインのキラが、寒々とした部屋に外から買い物袋を提げて戻って来て、ドアを開けたままにしているところへ一人の少年が入ってきたところから始まる。
二人の会話から、姉と弟のような関係にも見えるのだが、姉弟の関係にしては少しよそよそしい感じがする。
少年は母親が1年前に亡くなったこと、その後父が変わったことなど、矢継ぎ早に語り、キラがどうして家を出て行ったのか尋ねる。
二人の会話から、少年エドワードは今18歳で、キラがエドワードと出会ったのが彼女がちょうど18歳だったことが分かり、それから6年の歳月が過ぎ去ったようである。
エドワードが出て行って、キラがバスルームでシャワーを浴びているところに来客のブザーが鳴り、キラはバスタオルで身を包んで窓から、その来客の為に鍵を投げ落とす。
来客は、二人の会話からキラの元カレのように見えるが、会話の進行の中でエドワードの父親のトムであることが分かり、二人の関係と彼女がなぜトムの家を出て行ったかが、サスペンス風に明らかにされていく。
この劇の見どころは、そのプロセスにおける二人の会話にあり、心理劇的な興味のある作品である。
トムとキラのすれ違いでそのまま終わっていれば、消化不良気味の不満が残るところだが、最後に再びエドワードが登場し、キラが朝食に食べたいと言っていたスクランブルエッグやクロワッサンなど友人から調達してきて、二人が一緒に食事を始める場面で幕となることで、ある種の救いを感じる。
ヒロインのキラに蒼井優、少年エドワードに葉山奨之、トムに浅野雅博。
ピリピリとした緊張感からくる疲労感を感じる劇であった。
上演時間、途中15分間の休憩を挟んで、2時間40分。


作/デイヴィッド・ヘア、翻訳/浦辺千鶴、演出/小川絵梨子、美術/二村周作
12月1日(土)14時開演、新国立劇場・小劇場
チケット:(プレビュー・シニア)2052円、座席:(バルコニー)RB列8番


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