高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   燐光群公演 『サイパンの約束』             No. 2018-043
 

久しぶりに燐光群の公演を観る。
客演の渡辺美佐子が主人公で、その相手役に同じく客演の間宮啓行。
坂手洋二の劇からは改めて知らされ学ぶことが多いのだが、今回の舞台であるサイパンが29年間も日本の領土であったことを知るのもその一つであった。
舞台は、ヒロインの大城晴恵を演じる渡辺美佐子と比嘉幸市を演じる間宮啓行が、サイパンのとある喫茶で会話を交わしている場面から始まるが、それはヒロインが少女時代を過ごした日々の回顧を映画にするワークショップの一場面であることが分かる。
そこから劇は、そのワークショップの進行と並行して過去を交錯させながら展開していく。
リベラルな思想の持ち主である比嘉は、日本の敗戦の嘘の情報を流しているということで、日本兵から殺されるが、それを教唆した隊長は部下の兵士を騙して責任を負わせ、自分は何も知らない、民間人であると言って罰を逃れる。
10本の指はそれぞれみな長さが違う、それを肯定する沖縄の方言が劇中何度も繰り返されるが、それは玉城沖縄県知事が当選した時の言葉でもあり、その言葉によっても過去と現在のつながりを感じさせ、現実に改めて憤りを感じさせる重たいものがある。
ワークショップの間、この映画の監督がヒロインの弟の息子だということも明らかになるとともに、監督が不在であったのは、この物語の実際の体験者である大城晴恵に演じさせる為、ヒロイン役の女優を降板させる説得のために時間を費やしていたこともわかり、終わりは、最初の状況が本番として再現される。
出演は、燐光群のメンバーのほかに、さとうこうじなども客演。
上演時間、休憩なしで2時間20分。


作・演出/坂手洋二
11月30日(金)14時開演、座・高円寺1、チケット:3800円、座席:C列19番


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