高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   KURAKUEN企画・第3回公演 『アクノジュージカ』        No. 2018-040
 

最初は観ていて阿保らしいという気の方が先に立ってしようがなく、なんとも馬鹿々々しくて感想の書きようもないくらいだったのだが、終わってしばらく時間がたってみると、心に残るものがある不思議な劇である。
劇の冒頭部分はまだしも、すぐにこの馬鹿々々しさが展開し、いい歳をした7人の役者たちがレインボー・セブンとして登場し、少し唖然とした気にさせられる。
観ている最中はストーリーも何もないように展開していくのだが、だんだん物語らしさが備わってくる。
悪の怪獣をやっつけるレインボー・セブンの仲間たちは、いつしか齢を取り、それぞれ何らかの理由で、一人二人とやめていき、最後に残ったのは虹の色とは関係ないレインボー・ブラウンのみで、カップラーメンをすすりながら、牛丼屋のアルバイトや、派遣社員としてトイレの清掃の仕事をしながら老いた体で怪獣を相手に戦う。
正義の味方のレインボー・ブラウンの名前は「正義」と書いてマサヨシと読み、子供のころに、「博士」と書いてヒロシと読む少年と二人で遊んでいるうちに、色んな仲間を集めてレインボー・セブンとして怪獣退治を始める。
話の筋は飛んで、正義は死んだ人間を怪獣に改造する博士と再会したり、正義の母は正義と妹を残して「伊香保温泉に行ってすぐに帰ってくる」と言ったまま男と蒸発したり、かと思えば、大阪人の夫婦が高利貸しの強欲婆に借金返済を追い立てられ、ついにはその婆を二人で殺し、その二人に婆の飼い猫が襲ったりと、とにかく話が色々飛躍するのだが、最初に書いたように、観終わってみれば何となく全体のストーリーの骨格がそれなりに備わっている不思議な劇である。
最後は、少年時代の正義と博士が早朝に二人でカブトムシを取りに出かけ、正義が一匹だけ捕まえることが出来たクワガタを博士にやるが、博士はそれを不注意で逃がしてしまう。
喉が渇いた二人は駄菓子屋で飲み物を買おうと思うが、店は閉まっていて、表に「十時開店」と張り紙がしてあり、博士はそれを見て、「アクノハジュウジカ!」と呟く。
最後にこのオチである。
タイトルの「アクノジュウジカ」で想像していたのは「悪の十字架」であったが、見事にどんでん返しを食らった。
出演は、レインボー・ブラウン=正義に伊藤イサム、高利貸しの婆で正義の母役に北村青子、猫にこばりかずみ、博士に竹廣零二、高利貸しに迫られる大阪弁の夫婦役に大間剛志と小木敦子、正義の妹役にながさわ真瑠の、総勢7人。
上演時間は、休憩なしで1時間30分。


作・演出/武内紀子、演出助手/大間剛志
11月3日(土)15時開演、中野スタジオあくとれ、チケット:3000円


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