高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   M.B.Eプロジェクト公演 『喪服の似合うエレクトラ』         No. 2018-039
 

ギリシャ神話のエレクトラとオレステスの物語を下敷きにし、南北戦争時代のニューイングランドの将軍の邸を舞台に、マノン家一家の愛憎を描いたオニールの三部作で、第一部「帰郷」、第二部「追われる者」、第三部「憑かれた者」からなり、当初の計画では三部作カットなしで6時間の上演を予定していたが、最終的には4時間の上演としてカットされた。
また、全員仮面をかぶる構想も、ラヴィニアだけが顔全面を覆う白い仮面をかぶり、エズラ・マノン、その息子オリン、そして快速帆船の船長アダム・ブラントの3人が半仮面を付けるにとどめた。
アダム・ブラントはマノン家の当主であるエズラの叔父と子守娘との間に生まれた子供であることが明らかにされ、彼もマノン家の一人として、エズラ、オリンともども似た顔をしているという設定から、この3人だけに半仮面を付けさせている。
舞台は、観客席が両サイドと正面の三方からなるT字型の張り出し舞台で、自分の席は正面積の最前列中央。
劇は、一家全員が亡くなった後、邸に閉じ籠っていたラヴィニアが今は老婆となって、彼女がマノン家の歴史を物語るという形式で展開され、舞台上で演じるラヴィニアは仮面を付けて所作のみで、台詞は語り部のラヴィニアがすべて語る。
物語は、ギリシャ悲劇と同じく暗く、陰惨な話であるが、第二部の船長ブラントが殺される前に登場する船歌の音頭取りを演じる演出の篠本賢一の演技は『マクベス』における門番の役と似通っていて、息抜きの場面として観客の気分を和ませてくれるものであった。
また、声量豊かに歌を歌いながら登場するマノン家の庭師セス・ベックウィズを演じる佐々木梅治の演技も全体の気分を和らげてくれた。
重量感があって見応えのある舞台で、ウッドベースの演奏もこの舞台の雰囲気にも非常に似合っていた。
出演は、エズラ・マノンにをはり万造、その妻クリスティーンに横尾香代子、息子オリンに藤田三三三、マノン家の隣に住むピーター・ナイルズに草野峻平、その妹ヘイゼルに立花芽衣、船長ブラントに荒川大三朗、語り部としての老婆のラヴィニアに松川真澄、仮面のラヴィニアに神保麻奈と青木恵、他。
上演時間は、10分間の2回の休憩を入れて4時間15分。


原作/ユージン・オニール、翻訳/菅 泰男、演出・美術/篠本賢一
ドラマトゥルク/平辰 彦、音楽・演奏/水野俊介(5弦ウッドベース)
10月28日(日)13時開演、両国・シアターX、チケット:5000円、座席:B列10番


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