高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   サロンdeお芝居 No.4 『患者』(The Patient)         No. 2018-038
 

アガサ・クリスティーの推理劇のどんでん返しの結末をコンパクトに濃縮した舞台であった。
3階のベランダから落ち、一命をとりとめたものの全身不随で話すことも出来ない、うつ病に悩む富豪の女性、ジェイン・ウィングフィールド。
その事故に不審を抱いた警部グレーが、医師のギンズバーグと、特殊な器機を開発した技師ランセンの協力を得て、ジェインの関係者である姉二人、夫とその秘書を集めて、その器機を使って実験を始める。
ジェインは全く身体を動かすことが出来ないながらも、指先だけはかろうじて動かせ、しかも医師によると意識だけははっきりしており、人の話を理解できるという。
イエスとノーで答えられるように医師は慎重に質問を続けていく。
その質問の間にジェインの周囲の人間関係が明らかにされていき、誰もが疑わしく思われるようになる。
夫のブライアンは秘書のブレンダと不倫関係にあり、姉二人は妹の遺産相続者でジェインが亡くなれば莫大な財産を手に入れることが出来る。
長女である姉エメリーンは、かつてはブライアンの恋人であったのを妹にとられたという恨みを抱いていることを秘書のブレンダに暴かれ、次女である妹エリザベスは浪費家で妹にいつもおかねをせびっていたという。
実験でジェインは、ベランダから落ちたことについて、その状況をアルファベットで答えられるように医師から質問され、Mという文字に反応を示し、それが事故でなく殺人であったとし、自分をベランダから突き落とした犯人を見て知っているということにイエスの反応を示す。
犯人の名前をアルファベットで質問をすると、Bに反応し、Bの頭文字を持つ人物が犯人であることまできて、ジェインの血圧もあがって容態が悪化し、30分間の休憩を取ることになり、一同は一旦解散させられる。
一同が解散した後、エメリーンだけ引き止められ、警部からさらに質問を受けるが、そのとき、彼女は花瓶の中から「気づかれている。注意をするように。B」というメモを見つけたと言って警部に渡し、彼女も退席する。
医師のギンズバーグと警部、それに患者のジェイン以外誰もいなくなったところで、ジェインが実は状態が回復して、話も出来る状態にあることが明らかになる。
ジェインは、実は犯人を見ていなくて、自分を突き落とした人間が誰であるかを知りたくて警部の実験に従ったのであった。
犯人の名前の頭文字がBであることを突き付けられた容疑者が、実験の再開でいよいよ暴露されることを恐れ、手を打ちに来ることを見越して、警部と医師は患者を一人残して立ち去る。
予想通り、犯人がジェインを殺そうとして現れるが、それはこれまでの展開で予想もされなかった人物であった。
ジェインの姉エメリーンを演じる森秋子と、秘書ブレンダを演じる佐藤和子の対決の場面は一番の見どころで、二人の演技も秀逸で、高橋正彦と同じくシェイクスピア・シアター創立メンバーの一人であるが、舞台は37年ぶりという佐藤和子は長いブランクを感じさせない見事な演技と台詞力で、舞台歴の長い森秋子とのバトルを熱演した。
グレー警部には「芝居deサロン」を立ち上げた高橋正彦、医師ギンズバーグには臺月子、次女エリザベスに柳沢迪子、ジェインの夫ブライアンにシェイクスピア・シアター中高年クラスの丸茂三春、技師ランセンに東京国際大学演劇部の加藤郁海、ジェインに尾崎廣子、ジェインの看護婦に大河原崇子、看護研修生に河村まこ。
上演時間は、1時間。

 

原作/アガサ・クリスティー、演出/川島聖一郎
10月27日(土)14時開演、阿佐ヶ谷ワークショップ、お芝居参加費:2000円


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