高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   世界でいちばんちいさな劇場 No.82 ペルソナ/仮面の街      No. 2018-032
 
~ 吟遊詩人・条田瑞穂の連続創作詩劇朗読 ~

第一部では、
(1)「アルテミス」月の女神
(2)「ペルソナ」仮面の街
(3)「イカロス」パブロ・カザロスに捧ぐ
(4)「オルフェの祈り」滴り
(5)「ノア」洪水の前夜
を、一気に朗読。伴奏は尼理愛子の薩摩琵琶。「イカロス」だけを尺八で伴奏。
「ノア」を除いて、ギリシャ神話からタイトルを取っているものの、内容的には古代をテーマにして現代を語っているところが共通していた。
10分間の休憩の後、第二部では、
(1)「かむろ坂」逝く夏に
(2)「にほん黙示録」記憶の夏、その1とその2
(3)「クリスマス・キャロル」アンドレ・マルローに捧ぐ
第二部を始めるに当たって、当日の衣装について、アラビア語の教師から貰ったといういきさつと、自分の生い立ちの一端を語った。
条田は、1945年(昭和20年)8月6日、満州で生まれた。
その日、日本では広島に大型爆弾(原子爆弾)が落とされ、何百万人もの人が死んだという噂から、条田の母親は中国人の看護婦から、日本は戦争に負けて大変なことになっているのだから、赤ん坊を売りなさいと勧められたという。日本人の赤ん坊、それも女の子だと高く売れるのだという。だが、母親は生まれた赤ん坊を抱えて病院から逃げ出し、苦労をしながらも日本に何とか無事に帰ることが出来た。
大勢の人が亡くなった8月6日生まれだということで、条田は母親や家族から一度も誕生日を祝ってもらったことがないという。それが3年前の8月6日、70歳の時、広島の原爆ドームの前で自作の詩「命」を朗読する前、その日が彼女の誕生日であることを周囲の人が聞いて、お祝いのケーキのプレゼントと全員が祝ってくれ、詩の朗読が出来来ないほど号泣してしまったという。
「命」の詩は、シリアからの難民である友人の女性がアラビア語に翻訳して、一緒に朗読したことも語り、8月は条田にとって特別な月であり、生きている限り、戦争の詩を朗読し続ける決意をも語った。
第二部の内容は、生い立ちからの自分史と、戦争の記憶の記録の詩といえる。
第二部の最後の「クリスマス・キャロル」は、条田が10歳のころのクリスマスの話で、当時の秋田でのクリスマスの日の家庭の風景を垣間見る思いがする内容で、ちょっぴりユーモラスなエピソードを含んでいた。
それは、クリスマス・プレゼントに条田の弟はグローブをもらったが、それが藁を詰めた布製だったことから、弟は自分の家は貧乏なのかと、姉の条田に尋ねると、彼女は「ヤンボーニンボービンボー」と歌ってごまかすと、大人たちもそれに唱和したというエピソードであった。
尼理愛子が即興で伴奏する薩摩琵琶と尺八も合わせて楽しませてもらった。


9月24日(月)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロンにて
料金:1000円(ドリンク付き)


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