高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   世界でいちばんちいさな劇場 No.83 仮死/詩界への挑戦(チャレンジ)   No. 2018-026
 

~ 吟遊詩人・条田瑞穂の連続創作詩劇朗読 ~

予定されていたアコーディオン演奏者の伊藤ちか子の来場なしというハップニングがあったが、ヴィオロンのマスター寺元氏の機転でレコード演奏の伴奏で切り抜け、その選曲が朗読にマッチングしていて、思わぬ効果を楽しむことが出来た。今回の演目は、その名も「仮死/詩界への挑戦」と題して、
第一部(伴奏曲:バッハ)
1) 宇宙鳥
2) 寄す処(よすが)~天の眼は~
3) 甘い孤独~蝉しぐれ~
4) 母子像~Mさんに~
5) エンジェルアワーNo.1~昭和の子どもシリーズより~
第二部(伴奏曲:サンサースの第3番)
1) アルテミス(月の神)の高笑い
2) 歌う川~サラに~
3) 砂の揺りかご~時空を超えサハラの風が遠くから聞こえる夏~
朗読を聴いている時、言葉を追いながら詩界のイメージを想像することを楽しむが、聴き終わった後、記録を残そうと思っても言葉が記憶からすでに消え去って、イメージの残像だけしか残っていないのが口惜しい。
第一部の「宇宙鳥」と第二部の「砂の揺りかご」の作品に砂漠が唄われていることもあって、今回残ったイメージの残像は砂漠であった。
作者がかつて実際に砂漠を歩いた実体験と現日本の現実と、虚構の幻想が交錯し、砂漠を歩く隊商が突然、新宿や青梅街道を歩いていたり、また別の所では、現実に対する或る種の憤りが暗喩されていたり、聴いていて、幻想の世界に引き込まれたかと思うと、ごく身近な地名が現実の方へと引き寄せられたり、楽しませてくれる。
言葉としての印象が残っている作品は、懐かしい童謡の数々が散りばめられた「エンジェルアワー」と、賞味期限切れの世界が崩壊へとあたふたと急ぐという詩句がリフレインされる「アルテミスの高笑い」であった。
第二部の「歌う川」は5月にも聴いていたので、この作品は内容的にも記憶にはっきり残っており、イメージの反芻が出来て味わいを新たにすることが出来た。このように再演も一部取り入れてもらえると非常にありがたい。
朗読時間は、一部と二部の間の休憩10分を含めて1時間10分。観客(聴衆)は、自分を含めて5名であった。


吟遊詩人・条田瑞穂の連続創作詩劇朗読

8月16日(月)19時より、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロンにて
料金:1000円(コーヒー付き)


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