高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   ENGEKI GENE第3回公演 『龍馬奇譚・Ⅲ~哀愁の清水湊~』      No. 2018-002
 

劇団の主宰者であり、演出者、役者でもある北村泰助が、40歳になったのを人生の折り返し点に差し迫った節目として、自分にとっての一番身近なヒーローをテーマにした『龍馬奇譚』を上演したのは、2015年4月、ENGEKI GENE旗揚げ公演としてであった。
今回は、その最終編として、駿河の国、清水湊を舞台にして「哀愁の清水湊」とサブタイトルを付けての活劇。
高知、土佐藩の武士(正確には郷士)の才谷梅太郎こと坂本龍馬、前河内愛之助こと沢村惣乃丞、そして白札郷士の池辺源十郎が今回も中心人物として登場し、第一部同様に、高橋和久、北村泰助、菊地真之がそれぞれを演じた。
ストーリー展開の面白さとパワーにあふれるエンターテインメントを楽しむことが出来たと前回の感想にも記しているが、今回も登場人物の魅力とあいまって一層楽しんで観ることが出来た。
清水湊が舞台となっているので、お馴染みの清水次郎長(小山弘訓)の登場と、そこに幕府海軍奉行並の勝麟太郎(平島聡)が登場する意外性の面白さが重なる。
その勝は「リンさん」として次郎長の英語の家庭教師「リンさん」として登場するので、最初は誰のことか分からなかったが、龍馬にこれからの日本の在り方を語る場面で、勝麟太郎こと勝海舟であることに気づかされる。
チラシのキャスト紹介で役者の人物紹介だけで役柄の紹介がなかったので、登場人物の名前が不正確になるといけないので省略するが、物語は主筋の龍馬のストーリーに副筋として竹村洋人演じる駿河藩の武士が家禄を返報し、武士を捨てる話から始まる。
龍馬は、日本を洗濯すると言いながらその方策も具体的な内容もまだ闇の中で、そのきっかけをつかむために次郎長のところに、愛之助、源十郎とともに押しかける。
家禄を返上した武士は、御上の知るところとなり、その責めを負って、武士を捨てながら最後は武士として腹を切って死ぬ。
次郎長のところで三助をしているその武士の弟が、詰め腹を切らせた仲間の侍に、愛之助の助言で果たし状を突き付けるが、その喧嘩を次郎長が引き取る。
侍の果し合いに一介の博徒が仲介してくるのは、背後に幕府の役人勝麟太郎がいてのことだが、その場での登場では、彼が名乗り出ることでそれまで次郎長に食って掛かっていた武士たちが平伏する姿に水戸黄門を思わせ、スカッとした気分にならせ、エンターテインメントとしての痛快さと面白さを感じさせてくれた。
開演早々では出演者総出でのダンスというか踊りで華やかさを出し、劇中では茶摘みの場面その他での女優陣の踊りで目を楽しませた。
最後のシーンでは、果し合いの場に割って入って竹村役の武士の弟(後に小政となる)をかばって死ぬ女賭博師のお松演じる武田久美子が龍馬の背後に登場し、和歌の前半を詠じ、後半部を龍馬がそれを受けて詠じるのだが、知っている歌であったが、惜しいことにその和歌の台詞を忘れてしまった。
出演者は、「熊」こと後の大政役の弓削郎など多彩な顔ぶれで、総勢18名。
上演時間は、休憩なしで100分。

脚本・演出/北村泰助、美術/大津英輔+鶴屋
1月26日(金)14時開演、池袋・シアターグリーン
チケット:3800円、全席自由席


>>別館トップページへ