シェイクスピア以外の観劇記録・劇評

 

2017年8月の観劇日記

018 10日(木)14時開演、グループ虎XシアターX提携公演 『荒木町ラプソディー』

作/佐々木譲、構成・演出/高橋征男、美術/佐々波雅子
出演/風間舞子、下元史郎、花房青也、笠松真智子、白井真木、林真之介、古川がん、鶴忠博、
   五歩一豊、他
   ダンサー(10名)、尼理愛子(薩摩琵琶)、総勢28名
両国・シアターX、チケット:(指定席・出演者割引)4300円、座席:A列15番


【観劇メモ】
原作の作品を読んだこともなければ原作者の名前すら知らなかったので、出演者の案内がなければ見ることはなかっただけにその案内は非常にありがたく、幸運であった。
グループ虎による公演は、昨年4月、同じくシアターXでの『レ・ミゼラブル』で一度観ており、その時今回案内をもらった白井真木と一緒に出演していた林真之介だけはよく覚えていたが、あらためてチラシの出演者を見直して見た時、知っている出演者に、かつて劇団AUNで観て強い印象の残っていた鶴忠博が載っているのを見て懐かしく思ったのと、薩摩琵琶演奏で尼理愛子が出演していることで一層興味が湧いた。
内容については原作を知らないままで観ているので、初めは劇の展開についていくのに必死であったが、それだけに推理とサスペンスに満ちて、時間が過ぎてゆくのも気が付かない程見入ったので、原作を読んでいなくてむしろ良かったと思った。
チラシによれば、この作品は再々演で、今回は新たな演出を加えているということであったが、初演も再演も観ていないのでその比較のほどはしようがないのが少し残念ではあった。
原作名は『地層捜査』で、この劇では副題として扱われていたが、かつて花街であったという荒木町という自分のまったく知らない地を舞台にして、およそ半世紀前に起こって迷宮入りした殺人事件を再捜査するという話であるが、その再捜査のきっかけは当時の事件で汚名を蒙った建設会社の社長でもある都議が、引退を前にしてその汚名の疑惑を晴らしたいということから、若手の刑事水戸部(花房青也)が当時の事件を扱った元刑事で今は相談員の加納(下元史郎)の協力を得て再捜査が始まり、新たな新事実が明らかになっていく。
劇の展開によって劇中の疑問が少しずつ明らかにされていき、後半部になって犯人の想像がつく場面が出て来て、それが実際に舞台上で殺人場面が再現されることで確実なものとなる。
この再捜査の始まりに当たって渡された資料に、元板前の柳瀬の証言資料が抜けていることに疑問を持っていた水戸部が、捜査の協力者である加納が意図的に外していたことを知る。
加納はホスピスに入って余命いくばくもない犯人をいまさら法廷に引き出して何になるという気持ちであるが、若い捜査官である水戸部は正義感と原則論で事の真相を公にしようとし意見が対立するが、この劇の核心は結局犯人を探し当てたことより、こちらの方にあるように感じた。
元芸者の置屋をしていた小鈴(風間舞子)が殺されたのは、当時のバブルを背景にした地上げ屋のもつれからと推測され、それがもとで当時その地上げに絡んだ不動産屋や建設会社の者たちが疑惑に上がり、この再捜査の発端となった都議もその一人であったのだが、結末は意外にも愛情問題であったことが判明する。
この再捜査で、別の隠れた殺人事件が明らかになるが、それが副筋としてこの劇に膨らみを持たせて二重のサスペンスを引き起こすが、そのどちらにも関与している元刑事の加納にこの劇の焦点を感じた。
置屋で芸者の着付けや身の回りの世話をしていた元見番の草間を演じた林真之介、殺された小鈴の置屋にいた元芸者の吉住みねを演じた白井真木の老け役と衣装の早変わり、小鈴のパトロン国枝を演じた鶴忠博など、準主役の活躍も主役以外に見どころであっただけでなく、尼理愛子の薩摩琵琶演奏も堪能させてもらった。
休憩なしで2時間30分の上演時間があっという間に過ぎた。

 

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