高木登劇評-アーデンの森散歩道-別館-

 

6月の観劇日記
 
022 8日(金) シェイクスピア・シアター公演 『こころ』

原作/夏目漱石、脚本・演出/出口典雄
出演/得丸伸二(先生)、平澤智之(私)、佳川佳寿子(奥さん)、吉沢希梨(未亡人)、松木良方(私の父/先生の叔父)、他

俳優座劇場


023 9日(土) 加藤健一事務所公演 『モスクワからの退却』

作/ウイリアム・ニコルソン、翻訳/小田島恒志、演出/鵜山仁、美術/島次郎
出演/加藤健一、久野綾希子、山本芳樹

下北沢・本多劇場


024 23日(土) 劇団青年座第189回公演 『悔しい女』

作/土田英生、演出/宮田慶子、装置/島次郎
出演/那須佐代子、小林正寛、田中耕二、森脇由紀、片岡富枝、他

紀伊国屋ホール

【観劇メモ】
土田英生が紡ぎだす台詞のどこかいらつくような妙技を楽しむ。

結婚を3度失敗した優子(那須佐代子)が4度目の結婚をインターネット上の絵本作家高田(小林正寛)と4度目の結婚をし、これを最後にしたいといいながらも、結局は高田と別れ、今度は大学院生横山(川上英四郎)に高田に対してと同じ台詞を言うが、なんとなくこれが本当に最後になるかなと思わせる。大学院生を演じる川上英四郎が優子に対して、突き放したようなそっけなさがそのような予感を感じさせる。

優子がつぶやく「悔しい」は、自分自身に向けてのようにも聞こえるし、これまで裏切られてきた夫、社会に対してでもあるように聞こえる。

喫茶店のマスターを演じる田中耕二にほのぼのとした明るさを感じ、救われる気がした。


025 24日(日) 新国立劇場2006/2007シリーズ 『氷屋来たる』

作/ユージン・オニール、翻訳/沼澤洽治、演出/栗山民也、美術/島次郎
出演/市村正親、中嶋しゅう、岡本健一、たかお鷹、花王おさむ、久保酎吉、木場勝己、他

新国立劇場・小劇場

 

【観劇メモ】
台詞の中で、「・・・は牢獄だ」というのがあって、それがハムレットの「デンマークは牢獄だ」という台詞と重なって聞こえ、「明日、明日・・・」と虚しくあすを期待する(実は期待などしていなくて絶望している)かつてのボーア戦争特派員ジェームズ・キャメロン(通称「明日のジミー」、花王おさむ)の台詞は、マクベスの台詞と重なって聞こえた。

途中休憩15分をはさんで3時間40分の上演時間も長いとは感じられない濃密な舞台であった。

新国立劇場芸術監督として最後の栗山民也演出。

 


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