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2時間半は少なくともかかるのを1時間以内で5幕にわたるペリクリーズの冒険譚をすべて盛り込んでいるため、登場人物も多く、そのため、台詞のカット場面も当然のことながらかなりある。
『ペリクリーズ』は、各幕の冒頭部すべてに劇の進行役としての古(いにしえ)の詩人ガワー(逍遥訳ではゴーワー)が登場し各幕の状況を概説するので、全体の流れはそれでつかめる。それだけにこの短く省略された舞台ではガワーの役割が主人公と同じくらい重要な役となる。しかも、逍遥訳のガワーの台詞は、擬古文調で古く、耳にはなじみにくい。その難しい役を演出の高橋正彦が見事に朗読を演じて、ペリクリーズの船旅冒険を無事に乗り切った。
ペリクリーズとガワー以外の重要な役を果たしたのが、大河原崇子のピアノ演奏。開演時の導入に、かなりの時間をかけてピアノ演奏で観客の意識を別次元へと誘い出す。途中の幕が移るとき、すなわち、ペリクリーズが別の海の旅に出る時にもそのピアノ演奏が入ることで場面のメリハリをつけ、再会の喜びの最後の場面でも、登場人物が全員退場した後、ピアノ演奏でその喜びの余情を観客の胸に静かに納めたのも心に残った。
ヒーローのペリクリーズは多くの人物と遭遇するが、そのそれぞれの人物、アンチオックの王アンタイオカス、ターサスの太守クリーオン、ペンタポリスの王サイモニディーズ、クリーオンの妻の僕(しもべ)でマーリーナの殺し屋リーオナイン、ミチリーニーの太守ライシミカス、そしてエフェサスの貴族セリモンの役を一人で演じた蝉丸は、それぞれの人物の声色を変化させ、中でも出色だったのはクリーオンの田舎者丸出しの口調で、殺し屋役とのアンバランスの面白みを楽しませてくれた。
ヒーローのペリクリーズを演じた菊地真之も、場面によっての声色の変化のうまさを味合わせてくれた。マーリーナが自分の名を名乗った時のペリクリーズは、それまでの眠たげな沈んだ声の調子から突然の大声で、僕の前の席のお客さんは眠りから覚まされたように飛び上がらんばかりの驚愕の表情をされた。ペリクリーズとマーリーナのこの再会の場が一番の感動を与えてくれた。
マーリーナは、倉橋秀美がチャーミングに演じ、ペリクリーズの妻セーイザとダイアナ神を薹史子。 高橋正彦はガワーだけでなくペンタポリスの漁師とマーリーナをさらう海賊、ほか水夫の役も演じた。
ピアノ演奏の大河原崇子は、ペリクリーズの前で歌うマーリーナの歌声をピアノ演奏にのせてハミングしてその場の雰囲気を醸し出していたのが素晴らしかった。
5人の出演者がそれぞれの持ち味を十二分に味合わせてくれた、聴くだけでなく観る楽しみも与えてくれた朗読劇だった。
翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
ピアノ演奏/大河原崇子
5月27日(水)18時30分開演、阿佐ヶ谷・名曲喫茶ヴィオロン
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