2025年髙木登観劇日記
 
   江戸馨のシェイクスピア・カフェ No. 11           No. 2025-037

日英語朗読劇 「ヘンリー四世 一部・二部」より 『王子と酒呑み』

 いつもマエセツの解説が長くなるということで(自分はそれを楽しみにしているのだが)、今回は時計を目の前にして作品の概説を語った。
 『王子と酒呑み』は、『ヘンリー四世』の第一部と二部から、フォルスタッフとハル王子の二人を中心にしての話で、マエセツでは、フォルスタッフはシェイクスピアの作品の中でも一二を争う人気者で、それは台詞の長さ(多さ)にも現れており、『ウインザーの陽気な女房たち』を含めるとハムレットより多いのではないかという。
 台詞の行は版本によって異なるが、ハムレットの台詞は1495行で、フォルスタッフは『ヘンリー四世』の一部と二部を合わせて1253行あり、恋をするフォルスタッフの『ウインザー』は433行あるので、合わせると1686行となりハムレットより多くなる。また、フォルスタッフは『ヘンリー五世』でも彼自身の台詞はないが、かつての彼の仲間たちの噂話に登場する。
 ちなみに台詞の長さでは、『リチャード三世』のリチャードの台詞は1171行で、彼がグロスター公リチャードとして登場する『ヘンリー六世』第三部での台詞が406行あり、合わせると1577行となり、彼もハムレットより多い。台詞の長さ、多さからいうと、この3人がシェイクスピアの人気ナンバースリーといえるだろう。
 フォルスタッフが愛されるゆえんは、彼が完全な人間ではなく、むしろどうしようもなくだらしない人間である所にあるだろう。それが証拠に、英国では人気のある『ヘンリー五世』が日本ではあまり人気がない。ヘンリー五世が愛されるのはハル王子としての放蕩時代である。
 『王子と酒呑み』では、おもに『ヘンリー四世・第一部』を中心に構成されている。
 第1場として、<ロンドンの王子の部屋>(1幕2場)で、ハル王子とフォルスタッフ、それにポインズが登場してギャズヒルの追い剥ぎの相談をしている場面。ハルに江戸馨、フォルスタッフに丹下一、ポインズにりりり子。
 第2場は、<アンニュイな王子のいたずら>、イーストチープの居酒屋1(2幕4場)。ハル王子が給仕のフランシスをからかう場面で、りりり子が軽妙な台詞回しで彼を演じ、ハル王子を江戸馨、ポインズを丹下一が演じる。
 第3場、<フォルスタッフのご帰還 追い剥ぎのあとで>、イーストチープの居酒屋2(2幕4場)。
 第4場、<芝居>、イーストチープの居酒屋3(2幕4場)。フォルスタッフとハル王子がそれぞれ王ヘンリー四世を演じる場。次の場に移る前に、3幕1場の、ウェールズのグレンダワーの邸で、モーティマー夫人がウェールズ語で子守唄を歌う。それをりりり子が、ウェールズ語でみごとに独唱する。終演後に直接彼女に質問すると、本物のウェールズ語を自分で聴き起こしたものだという。彼女はフランス仕込みの道化役者であるだけでなく、コンサートでシャンソンを歌っているほどなので、その歌唱力はすばらしいものがあった。今回の朗読劇では、この彼女のウェールズ語での歌を聞くことが出来ただけでも価値があり、満足だった。
 最後の5場の<戴冠式>は、『ヘンリー四世』第二部の5幕5場にあたる場で、フォルスタッフがハル王子であったヘンリー五世から見捨てられる場面。
 フォルスタッフの丹下一、ハル王子の江戸馨、それに道化役のりりり子の朗読劇を楽しませてもらった。

 

訳・構成・演出/江戸 馨、音楽:作曲・演奏/奥泉 光
9月20日(土)15時開演、下北沢・Reading Caféピカイチ、料金:3000円(1ドリンク付き)


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