2025年髙木登観劇日記
 
   サブテレニアンプロデュース、ハムレット/ハムレットマシーン連続公演
    『ハムレット』 ~「わたしはオフィーリアだった」~        
No. 2025-034

 はじめての会場であったが、めずらしく迷わずに行けた。会場(劇場)の名前は「サブテレニアン」。
 建物の名前は「カルチャーコーポアルファ」で、建物の側壁に「SUBTRRANEAN」という文字があって、その文字を見て、サブテレニアンは「大地の下=地下」を意味しているのだろうと想像がついた。
 帰宅して改めて辞書で調べて見ると、やはり「地下に住む人、地下で働く人;地下の洞穴、地下室」とあった。
 会場はサブテレニアンの名前の通り、その建物にあるキックボクシング・ジム「建武館」の地下にある。
 その一風変わった名前の劇場「サブテレニアン」は、個人の経営で、「古典」「アバンギャルド」「パフォーマンスアート」の3つを縦軸にして、「国際交流」を横軸として、ドイツ、ポーランド、ネパール、韓国などと、アーキペラゴ(群島)の思想で、各地の劇場、演劇人と連帯しようとして活動して17年になるという。
 今回、このサブテレニアンが『ハムレット』と『ハムレットマシーン』を連続上演するということで、その興味からはじめてこの劇場に足を運ぶことになった。
 前置きが長くなったが、このサブテレニアンプロデュースの『ハムレット』は、台詞劇の『ハムレット』としてより「パフォーマンスアート」として見るべきものだろうと思った。
 舞台は平土間で、観客席は30席程度、この日の観客は20名ばかりであった。
 舞台の下手(会場の入り口側)の側面にはぎっしりと本が詰った本棚が3つ、そして三方の壁面にはさまざまな上着が11着ほど貼りつけられ、あるいは吊るされている。そして、下手側には、レースのスカートのような上着と黒い長いスカートをはかせた首のないマネキンが一体。
 壁の衣裳は、劇中、役者が役柄を変えるとき、そこから取ってはおられ、登場人物の変化を表すとともに、その他の上着は、劇中の周囲の登場人物を表象するかのようでもある。
 役柄は男女を逆にして演じられ、男性一人と4人の女優、合計5人の出演者である。
 開演して舞台が真っ暗な中で、マーセラスやホレイショーなどが登場する夜警の場から始まる。
 その夜警の場が終わると、男優が演じるオフィーリアの狂乱の場が演じられ、続いて夜警の場の一人が下手側の衣裳を取ってその衣装を身につける。その衣装は、半分は白く、半分はえんじ色の赤に分かれている。その女優は謁見の場でクローディアスとガートルードの二役を演じ、その衣装が男女二人を表象していることが分かる。
 オフィーリアは狂乱の場を中心にして演じられ、それを軸にして劇の進行は筋を前後させながら展開していく。
 クローディアスは、ヒキガエルか蜘蛛のように地面に這いつくばって台詞を語り、『テンペスト』のキャリバンを思い浮かべさせるものがあった。その這いつくばった様態が卑しく見えて自分としてはそのパフォーマンスには不満であった。
 ハムレットを演じる女優は、最後にはホレイショー、フォーティンブラスの台詞をも演じ、「生きるべきか、死ぬべきか」の台詞はこの劇の最終場面でも語られる。
 舞台はハムレットの最後の台詞では終わらず、オフィーリア役の男優が自分の着ていた白い衣装をハムレットに着せた後、「わたしはオフィーリアだった」と言って引き下がる。
 この台詞を聴いた時、「わたしはハムレットだった」という『ハムレットマシーン』がすぐに思い浮かび、今回のシリーズ公演としての次につなげる面白さがあった。
 ハムレットはその後も台詞を語りながら、下手へゆっくりと進み、闇の中に消えて舞台全体が真っ暗となる。
 劇の進行は、このように場面を交錯させながら展開していき、その中に登場する人物は、ハムレット、ホレイショー、クローディアス、ガートルード、オフィーリア、ポローニアス、オズリックなどで、オズリックはハムレットに殺された後ずっと舞台上に横たわっていたポローニアスが起き上って演じた。
 所作のパフォーマンスは、どちらかと言えば緩慢な動きで、ハムレットはほとんどが直立の姿勢、動きとしては狂乱の場を演じるオフィーリアのパフォーマンスの所作が目立つくらいで、台詞が無いときのその他の出演者は、壁際にくっついてポーズをとったままの静止状態が多かった。
 演出者のコンセプトとしてこの劇のテーマを「復讐劇」として表出しようとしているようだが、それはあまり感じることができなかったものの、全体の構成や、趣向としての面白さはあった。
 上演時間は、休憩なしで80分。

翻訳/河合祥一郎、構成・演出・美術/豊川涼太(街の星座)
8月22日(金)16時開演、板橋区氷川町・サブテレニアン
チケット:(『ハムレットマシーン』との2作通し券)6000円、座席:全席自由


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