2025年髙木登観劇日記
 
   新地球座公演 荒井良雄沙翁劇場 第48回
                 『アセンズのタイモン』      
No. 2025-031

 解説文の中で、「朗読劇の台本構成にあたって」で述べていることだが、演出家の方から「二人で上演できるように」という要望が最初にあったので、この劇の主人公であるタイモンとその執事フレイヴィアスとの二人の会話と、タイモンの周囲の人物の会話によってタイモンの人物像を浮かび上がらせるように構成した。
 主人公のタイモンと執事のフレイヴィアスはこの劇の中心人物で要でもあるので重要であるのは言うまでもないことであるが、タイモンという人物像を浮かび上がらせる周囲の人物を演じる役がこの劇の出来を左右すると思っていた。
 その周囲の人物に、詩人、タイモンの債権者の一人である元老、貴族のセムプロニアス、武骨で無作法な皮肉屋の哲学者アペマンダス、アルシバイアディーズ将軍の兵士の5役を演じる白井真木と、画家、元老の家僕ケーフィス、タイモンの家僕、アルシバイアディーズ将軍の4役を演じる倉橋秀美の二人の朗読演技は、タイモンの人物像を立体的に見事に造形してくれた。
 二人は、登場人物の役が変るごとにその衣装をすばやく着替え、所作も声色もその都度変化を持たせ、その変化を見るだけでも楽しく、面白かった。
 倉橋秀美の目の表情の演技にはいつも感心して見入って(魅入って)いるのだが、今回もその目の表情の演技を楽しませてもらった。
 この劇はシェイクスピアの劇の分類から言えば悲劇であるが、この二人の多様にして多彩な演技によって、時に笑い声が出るほどコミカルで軽妙なものがあった。
 『アセンズのタイモン』は、シェイクスピア劇の中で唯一女性の登場人物がない劇であるにもかかわらず、タイモンの周囲の人物をこの二人の女優が演じたというのもキャスティングの妙味であった。
 主人公のタイモンには滝本忠生、執事のフレイヴィアスには高橋正彦が演じた。二人ともシェイクスピア・シアターの1期生である。二人の朗読演技も息が合っていて、場面における状況の変化に応じた声質や、高低強弱を変化させた朗読演技もさすがで、観る者をして聞かしめた。
 この日、ヴィオロンは満席で、観客の大半が現役で活躍している演劇人や関係者であるが、その中に同じくシェイクスピア・シアター1期生で、タイモン役を演じたことがあるという田代隆秀氏も来られていて、終演後の打ち上げにも参加してくれた。打ち上げのお酒もおいしく、談話が弾み、メートルが上がってしまった。感謝!感謝!!

 

翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
7月23日(水)18時30分開演、阿佐ヶ谷・名曲喫茶ヴィオロン

 

記念写真

左から、高橋正彦、瀧本忠生、白井真木、倉橋秀美


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