2025年髙木登観劇日記
 
   イエローヘルメッツ番外公演 Vol. 3 『ヘンリー四世・第一部』   No. 2025-024

 女性5人で17役を休憩なしで一気に演じる。原作でも名前と台詞のある登場人物だけでも20人を超えるので、この劇の内容を知らない人にとっては話の展開が十分につかみにくいであろうが、知っている者にとっては非常にうまくコンパクトに忠実に伝えてくれるものとなっていた。
 それはひとえに5人の女優がそれぞれの人物像をうまく演じ分けていたことによる。
 自分も初めてこの劇を原文で読んだときには登場人物の区別がつかないことがままあった。それは人名を肩書で呼ぶこともあったり、異なった人物が同じ名前(例えば、ハリーなど)であったりすることで、当初は随分困惑したものだった。
 始まりの王ヘンリー(四世)の台詞は、4人の女性たちによってコーラスのようにして語られ、そこに客席通路からおもむろに王ヘンリーがその台詞を引き継いで語りながら登場し、舞台上に上がる。
5人の女性が演じる役がそれぞれにフィットしていたと思う。
 ヘンリー四世には小山あずさが重厚に演じ、彼女は他にバードルフ、モーティマー、ヴァーノンを演じ、王子ハルと騎士ブラントを小柄な萬家江美、精悍なホットスパーやヘンリー王の忠臣ウエスモーランド伯とフォールスタッフの仲間ギャッツビルを活気のある鷹野梨恵子、大柄な上原奈美が体形を生かしてフォールスタッフを演じたほか、ノーサンバランド伯、ウェールズ軍のグレンダワーとスコットランド軍のダグラスを演じ、服部容子がノーサンバランド伯の弟ウスター伯、フォールスタッフの仲間ポインズ、それにハル王子の弟ジョンをクールに演じた。
 それぞれ、登場人物の個性を分けて演じたが、なかでも出色であったのはフォールスタッフ、グレンダワー、ダグラスなどを演じた上原奈美。フォールスタッフには彼女の体形を活用したおおらかな演技、グレンダワーは薩摩弁を使ってウェールズの方言を表象しておかしみと興感を誘った。
 フォールスタッフの「名誉とはなんだ?!」の有名な台詞の個所は、フォールスタッフに他の4人がコーラスとなって輪唱したのも面白い趣向であった。
 スピーディな展開の中にも、劇の肝要な部分が全て網羅されていて、その内容を思い出しながら楽しんで観ることができ、1時間20分の上演時間があっという間に過ぎた。


小田島雄志訳による、脚本・演出/山崎清介
5月29日(木)19時開演(ゲネプロ)、吉祥寺・Rock Joint GB、
チケット:2400円+ドリンク代600円


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