2025年髙木登観劇日記
 
  江戸馨のシェイクスピア・カフェ No.7 
  日英語朗読、熟年の恋を描く 『アントニーとクレオパトラ』      
No. 2025-006

 少女時代のクレオパトラとシーザーとの出会いを描くバーナード・ショウ作の『シーザーとクレオパトラ』を1場にして、2場からはシェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』で熟年の恋を紡ぎ出す日英語による朗読劇。
 例によって江戸馨の解説が面白い。バーナード・ショウはシェイクスピアをくそみそにけなしているので有名で、シーザーについてもシェイクスピアは本当の英雄というものが分かっていないと散々の酷評である。
 『アントニーとクレオパトラ』は、映画ではエリザベス・テーラーが主演した4時間を超す大作で有名だが、その時の相手役リチャード・バートンとの逸話がまた面白い。バートンはイギリスの舞台俳優でシェイクスピア劇の名優でもあったが、テーラーと会ってからは彼女にメロメロになってしまった話などは、シェイクスピアのアントニーそのままである。
 江戸馨の話では出なかったのであるが、エリザベス・テーラーとリチャード・バートンの逸話でこんな話を聞いたことがある。バートンは先にも述べたように舞台俳優として演技もうまかったのであるが、テーラーはバートンの演技が臭いと言って、映画ではカメラがいいところを撮ってくれるので横顔をアップでいいところを見(魅)せるようにすればいいと言ったという話などを思い出した。熱愛に溺れたバートンは結局テーラーに捨てられてしまうのも、アントニーと重なって見えてくる。
 バーナード・ショウの戯曲はト書きが多いなどという解説の後、『シーザーとクレオパトラ』の第1幕、シーザーとクレオパトラがスフィンクスの像の所で出会うところから始まる。岩波文庫版の山本修二訳では、シーザーはクレオパトラから「おじさん」と呼ばれるのだが、江戸訳では「おじいさん」として訳しているように聞こえた。この時のシーザーは50代で、劇中の10代のクレオパトラからすれば「おじいさん」に見えたであろう。この少女時代のクレオパトラを演じたつかさまりの声がいかにもお茶目で可憐な少女という声で可愛い、対するシーザーを丹下一が渋い声で演じ、古代エジプトの世界へと誘ってくれた。
 2場から5場まではシェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』からで、2場は「アレクサンドリアの宮廷」の場、クレオパトラの愛に溺れたアントニーを部下たちが苦々しく思っている場面で、熟年のクレオパトラに江戸馨が日英語で朗読し、アントニーには丹下一。3場は「アクティウムの海戦:惨めな敗退」、4場は「オクティヴィアス・シーザーからの使者」、ここまでは江戸馨がクレオパトラを演じ、つかさまりはローマの兵士や使者などの役、最後の5場「最後の決戦、そして…」では英語でのクレオパトラを江戸馨、日本語でのクレオパトラをつかさまりが演じた。
 場面ごとに入る音楽を、アフガニスタンの楽器ラバーブで佐藤圭一が演奏し、場面の雰囲気を醸し出してくれた。
 いつものよう江戸馨の解説を楽しみ、つかさまりの七変化の声の魅力や丹下一の晴朗たる朗誦力に聞き惚れながら、シェイクスピアを楽しませてもらった。
 上演時間は、1時間10分。


訳・構成・解説・演出/江戸 馨、作曲・演奏(ラバーブ)/佐藤圭一
2月14日(金)15時開演、神保町・月花舎、料金/2500円


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