第1章 朗読劇 『十二夜』
福田恆存訳での朗読劇。
ヴィオラやセザーリオというこれまでに聞きなれない名前であったので、多分福田訳であろうと思っていたが、終演後に出演者に確認してやはりそうであったことが判明した。
オーシーノ―とマルヴォリョーを高橋正彦、オリヴィアを澤柳迪子、ヴィオラ(セザーリオ)を森秋子が演じ、三人がそれぞれ「語り」の役を場面に応じて語るという構成で、衣装の工夫や所作を交えての立体感のある朗読劇で、「サロンdeお芝居」が目指す「文学の立体化」を体現するものであった。
構成の面白さに加えて、熟年の女性お二人の若々しい発声で演じるオリヴィアとヴィオラの声の魅力と、黄色い靴下と十字留めの靴下を履いてマルヴォリョーを熱演する高橋正彦の所作、演技を楽しく鑑賞させてもらった。
40分ほどにコンパクトにまとめられた寸劇であったが、珍しく福田訳ということもあって、新鮮な感じで観て聴いて楽しむことができた。
第2章 ゴーゴリ―作『結婚』より、『ああ、求婚』
サロンdeお芝居の公演では、チェーホフやドストフェスキー、ゴーゴリ―などロシアの作家の作品をこれまでにも多く上演してきているが、今回も昨年上演したゴーゴリ―作『外套』に続いて、『結婚』から『ああ、求婚』を上演。
七等官の役人グズーキン(西村正嗣)が友人のセワーヤキン(高橋正彦)のかいがいしい世話でやっと商人の娘アガーフィア(深川史麻)と結婚話が成立したかと思うと、結婚生活に自信のないグズーキンは結婚式の日に窓から逃げ出してしまうという話であるが、その間の出来事が静かな中にも波乱を含んで展開していき、ちょっぴりハラハラドキドキさせる小劇(笑劇)であった。
他に、結婚斡旋の世話やきの女性フョークラに澤柳迪子、アガーフィアの伯母アリーナに森秋子、グズーキンの結婚競争相手に同じく八等官の役人メタマーヤキンに橋本大輝、召使の女ドゥニャーシャに廣森斉子が出演。
西村正嗣が演じるグズーキンとアガーフィアを演じる深川史麻のもじもじした所作が、内に潜んだ静かな笑いを感じさせて好演。登場人物の名前の響きの面白さとしては、グズーキンの友人セワーヤキンは名前の通り「世話焼き」と結びつく面白さ、そしてグズーキンのライバルのメターヤキンの名前は「目玉焼き」を思わせ、アガーフィアも結婚したら、「アガーフィア・メターヤキンになるの、いやだ~」と言わしめるというおかしみがある。
最初にまず驚いたのはテーマ曲であった。はじめは聴いたことのあるような曲だと思ったが、思い出せないでいたのだが、思い出すとそれは中村吉右衛門が演じていた「鬼平犯科帳」のテーマ曲であった。そんなところにもちょっとした遊び心を感じた劇であった。全体的に静かな調子で進む中で、池の中に小石を投げて広がる波紋のような展開の面白さのある寸劇であった。
上演時間は、約65分。
上演台本・演出/島川聖一郎
12月14日(土)13時30分開演、阿佐ヶ谷ワークショップ、料金:2000円
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