今年最後のシェイクスピア・カフェは、つかさまりと江戸馨二人だけによる「シェイクスピアの女たち」の日英語朗読。女性だけの出演だからというわけでもないが、昼の部は男性が自分ともう一人だけ(奥泉光氏)で、あとは女性が5、6名。夜の部は反対になぜか男性だけだという。
前半部は、『ロミオとジュリエット』の乳母をつかさまり、ジュリエットを江戸馨が日英語を交えての朗読。一部を坪内逍遥訳でつかさまりがジュリエットの台詞を朗読。
今回はクリスマスを前にしてのイベントということで、『ロミオとジュリエット』の「後朝(きぬぎぬ)の朝」の場面のジュリエットの台詞の一部を、中野好夫訳、小田島雄志訳、松岡和子訳、河合祥一郎役を観客の女性に朗読してもらい、英語と江戸馨のオリジナル訳「令和ジュリエット」を江戸馨が朗読し、そして同じ場面を逍遥訳でつかさまりが朗読するというお遊びを入れた。「令和ジュリエット」の訳は、
「マジ行っちゃうの?まだ朝じゃないし。もしかしてビビってる?あれナイテインゲール、ヒバリじゃないし。あさこのザクロの木の下で毎晩鳴いてんだよね、嘘じゃないってば。」
と、なかなか今風で、江戸馨の台詞の語調もたいへん面白かった。
後半部の『十二夜』に入る前に、佐藤圭一がアフガニスタンの楽器ラバブを用いて演奏。
演奏の前に佐藤恵一が、『ロミオとジュリエット』と類似した話はアフガニスタンにもあると言って簡単にそのストーリを語られた。それによると、敵対する両家の互いに愛し合っている娘と息子、娘は親の言いつけで他の男性と結婚させられるが処女のまま自死してしまい、いっぽう、息子の方はそのことを知らないまま砂漠をさまようという話で、物語の骨格はロミジュリと同じである。ラバブの演奏は初めて聞いたが、砂漠の乾燥と哀調を感じさせる演奏でしんみりと聴き入った。
後半部の『十二夜』は、シザーリオに扮したヴァイオラをつかさまり、オリヴィアとマライアを日英語で江戸馨、そしてマルヴォーリオをピカイチのマスターがサプライズで、店のカウンター奥から声の出演をした。
マエセツが長くなって(その方が楽しくてよかったが)、何時もより少し時間を延長しての和やかな雰囲気の中での朗読会であった。
シェイクスピアの台詞の一部を取り出しての朗読も、その部分を集中して聴くことができるという楽しみがあっていいものだと思う。また、どのように構成してその雰囲気を伝えるかということにも興味深く聴かせてもらった。
今回は、つかさまりの声の魅力と、江戸馨の美しい日英語による朗読を集中して楽しませてもらった。また、たまには今回のように観客を巻き込んでの試みも面白い試みだと思った。
訳・構成、解説・演出/江戸 馨、作曲・演奏/佐藤圭一
12月13日(土)15時開演、下北沢・ピカイチ、料金:2800円(ドリンク代込み)
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