ボヘミア王ポリクシニーズをもてなしている華やかなパーティの場から始まり、シチリアの貴族カミローとボヘミアの貴族アーキーデーマスの、ボヘミア王とシチリア王についての会話が交わされている。
劇が始まってすぐに気がつくのは、ほとんどすべての出演者が女性であることだった。数えてみると、出演者総勢18名のうち、女性が15名、男性は、羊飼いの老人、オートリカス、従者と紳士を演じる3名のみで、主要な役はすべて女性が演じている。
『冬物語』の見どころは、リオンティーズの突然が嫉妬する場面と、後半部最後の彫像の姿のハーマイオニが台座から動き出す瞬間とその前後の場面にあり、この二つの場面の出来次第でこの劇の良し悪しが全て決すると言っても過言ではない。
この劇団の指導と演出をしているのが元シェイクスピア・シアターの俳優であることから、シェイクスピア・シアター特有の台詞回しで、その訓練がよく行き届いているのが伺え、その点では安心して聴かれる。また、演技所作も問題なく観ることができる。
ひとりひとりの演技、台詞はほんとによくできていると思うのだが、場としての雰囲気が今一つという感じである。
一番の見どころの一つ、リオンティーズが突然嫉妬に走る場面を演じる黒田貴子の台詞も演技も申し分ないと思うが、それを納得させる説得力においていま一つであった。
最後の見せ場であるハーマイオニの彫像の姿を演じた山本順子もその立ち姿は申し分なく見えたが、これもその場の全体の雰囲気が今一歩という所であった。
アマチュアの劇団にここまで求めるのは酷というもので、逆に言えば、この彫像のハーマイオニが動く場面で感動の涙を誘うプロの演技というのはすごいものだと思った。
演出で今一つ注目する場は、後半部の初めの「時」の登場である。この演出では、黒いマント風の衣装を羽織った3人の女性が「時」をコーラスとして演じた。
最初のパーティの場もそうであるが、特に後半部の始まりである毛刈り祭りの歌と踊りの場面は、盛り上げに欠けていたのが惜しい。これをもっと華やかに盛り上げていたら後半部はもっとダイナミックに感じられたのにと思う。その「羊の毛刈り祭り」の歌と振付をしたのは、この劇中でパーディタを演じた舩木優。
上演時間は、途中15分間の休憩を入れて、2時間30分。
訳/小田島雄志、構成演出/牛尾穂積
9月14日(土)14時開演、ウッディシアター中目黒、料金:3000円、全席自由
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