1日限りの公演、第1部がシェイクスピアの『間違いの喜劇』(95分)、20分間の休憩の後、第2部「シェイクスピア・オマージュ」として『ソング&ダンスforシェイクスピア』(65分)という構成。
第1部の『間違いの喜劇』は、これまで自分が観てきた『間違いの喜劇』とはまったく異なる演出であった。
最初に男性とチェロを持った女性が下手側から登場し、一段高くなった舞台奥中央に据えられた椅子に座り、女性は手にしたチェロの演奏を始める。一方の男性はその衣装から「公爵」役と見えるが、劇の進行中、最後の場面に至るまでは、ただじっと座って舞台上の出来事を見ているだけである。
一段下がった舞台の左右両側にこの劇の登場人物たちがそれぞれの役にふさわしい衣装を着て登場して座る。
高齢の男女二人がマエセツとして登場し、シェイクスピアについて語り、この物語の概要を説明する。そのマエセツを演じたのは、劇中では商人その他をも演じる堀健二郎と芳尾孝子の二人。
このマエセツは、今回のような形式の公演では、シェイクスピアやその作品について知らない人が多いと思われるので、非常に良い工夫であった。二人の朴訥な語り口もかえってひきつけるものがあった。
そうして二人が語り終えると、舞台はいきなりアンティフォラス弟(青木天鴻)とドローミオ弟(岡林芽久)が登場し、マエセツの芳尾孝子が商人役として加わり、この芝居が始まる。
この劇の冒頭部であるイージオンと公爵登場の場面はまったく省かれている。
二組の双子の兄弟は衣装だけ同じものに合わせているだけであるが、ドローミオ兄弟の一方、弟の方は女性が演じている二もかかわらず雰囲気的にはよく似て感じられた。アンティフォラスの兄弟を実の兄弟が演じていたことも雰囲気が似て感じられる一つの理由であったかもしれない。
この劇の中心人物であるアンティフォラスとドローミオ兄弟と、アンティフォラス兄(青木龍平)の妻エドリエーナ(君島久子)とルシアーナ(持舘望瑛)は登場以外の場ではその場に残らない。また、イージオン(あべいくじろう)とその妻で修道女院院主のエミリア(畠中瞳)も最後の大詰めの場面までは舞台上には登場しない。
最後まで舞台奥にじっと座っていた公爵(千葉祐貴)が、エドリエーナとアンティフォラス兄の訴えの場となってはじめて口を開く。イージオンは舞台上手の袖の方にいて、公爵に訴えかける。エミリアは舞台下手の袖から現れ、そうしてアンティフォラスとドローミオ兄弟がそろって、大円団となる。
舞台上に出番までずっと座っているのは、上手側にピンチ(金純樹)、金細工師アンジェロ(杉山ともこ)、リュース(武久真子)、街中の大道芸人らしき役で少林寺拳法を演じるまりな、それに警吏役(橋爪創)。下手側にすわっているのは、マエセツの二人と派手な衣装を着た娼婦役の3人の女性たち。
第2部の「ソング&ダンス」は、オープニングの華やかなダンスショーで始まり、フォーティンブラスが登場するダンスや、ロミオとジュリエットをテーマにした歌と踊りなどで楽しませてくれ、エンディングでは第1部の出演者も全員登場してきてオリジナルソングを全員で歌って華やかに、賑わしく終了する。
祭典に相応しい催しで、楽しませてもらった。この公演は、出演者の芳尾孝子さんのご紹介で知り、ご招待していただいて観劇することができた。この場をお借りしてお礼申し上げます。
訳/小田島雄志、演出・構成/前田貞一郎
8月10日(土)15時30分開演、セシオン杉並、チケット:5000円、全席自由
|