シェイクスピアの作品の中ではおそらく日本で一番上演されている『夏の夜の夢』を、「妖精版」と「人間版」に分けての朗読劇で、6月はその「妖精版」を上演。
自分にとって、江戸馨の「シェイクスピア・カフェ」の楽しみの一つが、江戸馨の解説。
日本で一番上演されているだけに、自分でもこの劇を観ている回数は相当に多く、7、80本は観ているのではないかと思う。それだけに自分とは異なる視点での江戸馨の解説を楽しく聴くことが出来た。
今回は「妖精版」ということで、妖精に視点を当てて解説を進められ、江戸馨が観劇したことのある劇の話で、普通は若い俳優が演じるパックを、お腹もぽっくり出た老優が演じた(メモを取っていないので俳優の名前は忘れた)話など、面白く聴かせてもらった。似たような例で『リア王』の道化を、頭が禿げて、ずんぐりむっくりした、リア王と同じような老齢の役者が演じているのを観たことがあるのを思い出したりもした。
妖精は両性具有という解説もされ、これも男優が演じる演出も観たことがあるので身近な感じとして聞くことが出来た。また、原文では直接登場しないインドの少年を舞台上で表出するかどうかの話なども、登場させる演出なども観たことがあるだけに、心の中で比較しながら興味深く聴くことができた。
そんな興味ある話を聞かせてもらった後、いよいよ本番。
パックが妖精と出会うところから始まり、オーベロンとタイテーニアが遭遇して二人の喧嘩が始まる場面となる。オーベロンを演じる丹下一の迫力と重みのある台詞力、それに負けじと応じるつかさまりが演じるタイテーニアに、自分がその劇中のただなかにいるような臨場感迫る思いがした。
二人の日本語での朗読の後、同じ場面を、増留俊樹がオーベロン、江戸馨がタイテーニアを英語で演じる。
朗読劇ではあるが、出演者4人の台詞力が演技そのものとなって聞こえる。
最後は、つかさマリが演じるパックの台詞で終るのだが、この最後の台詞を英語で聞くことが出来なかったのだけが惜しまれた。
劇の進行の合い間に入る奥泉光の笛の演奏も、この朗読劇の臨場感を高めるのに一役買っていた。
わずか1時間の朗読劇であるが、日英語で台詞を楽しむことが出来る貴重な場であった。
訳/江戸馨、構成・演出/江戸馨、演奏/奥泉光
6月25日(火)15時開演、下北沢・ピカイチ、料金:3000円(ワンドリンク付)
【追記】 パックを演じた、お腹のぽっくり出た老優は、江戸馨さんから連絡をいただいて、リンゼイ・ケンプ・カンパニーの主宰者、リンゼイ・ケンプでした。(2024.07.03)
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