1週間の間、感想も書かないままでいたら、夢の中でこの朗読劇の感想がしきりに浮かんできたので、記録に残すべきだと催促されているような気がして書き留めることにした。
いつものように何もメモも取っていないので、ただ記憶に残っていることだけの記録である。
一番の印象は、作品の中の登場人物に対する視線の優しさを感じる江戸馨の解説である。
弟のオーランドーを憎んで殺そうとまで思っていたオリバーは、なぜかしら「森」に入ってからは人が変わってしまう。そのきっかけは、野獣に襲われ掛けていたところを弟に助けられたことであるが、彼は森に入ってからはすでに人が変わっていた。「森」は浄化作用があるのであった。
ヒロインのロザリンドは宮廷にいる間はむしろ寡黙であったが、森に入ってからは誰よりも喋り、劇中でも一番台詞が多い人物である。
一方、フレデリック公爵の娘シーリアは宮廷ではよく喋っていたが、森に入ってからはオーランドーへの恋に夢中になっているロザリンドの影に隠れて寡黙になって、心はすっぽり穴が開いたようになっている。そんなときオリバーと出会い、互いに一目惚れしてしまう。
そのあたりの心の機微に触れた江戸馨の解説で、その状況が手に取るように感じ取られる。
今一つ、サプライズは同じ場面を英語で朗読するとき、ロザリンドの台詞を江戸馨ではなく増留俊樹が声色を変えて語ったことである。彼はロザリンドを演じるつかさまりの衣装に合わせてピンクのワイシャツを着こんでいるという手の入れようである。意表をついた彼の朗読演技が秀逸であった。
『お気に召すまま』では、森の中で4組のカップルが生まれるが、そのなかで道化のタッチストーンも羊飼いの娘と結婚する。
シーリアの父である公爵が先の公爵を追って「森」に入った時に出会った聖者に感銘して、その地位を兄に返還して森に隠居することを決意したことで、先の公爵たちは宮廷に戻ることになるのだが、そのとき、結婚してしまった道化のタッチストーンはどうするのか、という疑問を江戸馨がそれとなく提示する(道化は結婚してはいけない!?)。
日英語による朗読と解説で1時間の上演なので、その演じる場面は限られているのだが、江戸馨の巧みな解説で全体の核心がすんなりと理解できる。
朗読は、オーランドー・フレデリック公爵・先の公爵・道化のタッチストーンを丹下一、ロザリンドや羊飼いのコリンをつかさまり、シーリアやエミアンズなどを江戸馨、レスラーのチャールズとロザリンドを増留俊樹。
哀調を帯びたリュートの演奏と、そのリュートをひとまわり小さくしたウッドの弦楽器(名前を失念)の軽快な音調の演奏を佐藤圭一。
あっという間の1時間であった。
訳・構成/江戸馨、音楽演奏・作曲/佐藤圭一
4月27日(土)15時開演、下北沢・ピカイチ、料金:3000円(ドリンク付き)
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