劇団はえぎわと彩の国さいたま芸術劇場の共同企画による
   ワークショップから生まれたシェイクスピアの悲劇 『マクベス』
    No. 2024-009

 造形創造的な『マクベス』!
 舞台全面に木製の椅子が、横8列、縦7列に舞台上に線引きされた一つ一つの枠の中に並べられている。その両脇の棚上の台には、ガラクタが山積みされている。
 開演前から、3人の魔女たちが入れ代わり立ち代わり、その椅子の間を行き来して、舞台下手のガラクタの山にある塔の形をした玩具にビー玉のようなものを上から転がしてはその音を聴きながら見て楽しんで、また椅子の間を通り抜けていく。そのビー玉が落ちるカラカラという音に、魔女のその行為がいつしか観客である自分にも心待ちにされるように引き込まれていく。
 開演時の、魔女の「きれいは、きたない」の声は、真っ暗な暗闇の中から響いてきて、明かりがついた時には、傷ついた兵士が王ダンカンに戦況を報告する場面となっている。
 場面展開ごとに、几帳面に枠のマス目の中に並べられていた椅子がダイナミックに移動させられ、場面ごとに象徴的な形状に配され、組み立てられ、椅子自体が舞台を形象していく。その椅子を使っての展開が舞台をスピーディにする。
 登場人物も、マクベスの内田健司とマクベス夫人の川上友里以外は、一人二役、三役を兼ね、その兼ねた人物の変化が先の人物と重なって感じられることがある。
 バンクオーを演じる山本圭祐は息子のフリーアンスと登場する場では、一人で二役を同時に演じて一人芝居をする。
 魔女たちを演じる茂手木桜子、菊池明明、踊り子ありは、それぞれ、門番とマクダフ夫人、マクダフの息子、侍女などを演じ、魔女とのイメージが二重に重なって見える。
 マクベスの手紙を読むマクベス夫人が歌を歌ったり、劇中、いろんな場面で音楽が多用され、舞台を多彩に彩る。その音楽の使用も断片的であったり、猥雑さを増幅する選曲という感じ。
 一人一人の台詞が画一的でなく、創造的で、個別的な響きをもっていて、実験を重なっているという趣がある。
 テンポよく進んでいて、それでいて、100分間の上演時間が長く感じられるような、混沌とした疲労感を感じるような舞台であった。
 ワークショップから生まれたというより、自らがそのワークショップに参加しているかのような、そんな舞台であった。
 出演者は、他に、ダンカン、暗殺者、医師を演じる村木仁、マクダフ他を演じる町田水城、マルカム他を演じる広田亮平、ロス他を演じる上村聡を含めて、全員で10名。

 

翻訳/松岡和子、上演台本・演出/ノゾエ征爾、美術/岩本三玲
2月18日(日)14時開演、東京芸術劇場シアターイースト、
チケット:4500円、座席:E列4番


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