文学座附属演劇研究所63期生は全部で30名いて、今回の卒業発表会はCastorとPolluxの2組に分かれての公演で、自分はPolluxの組を観劇。
その感想は一口に言って、卒業発表会というにふさわしい楽しい祝宴劇であったと思う。
同じ63期本科夜間部の卒業発表会の演目が『夏の夜の夢』であるせいかどうかは分からないが、『十二夜』の始まりと終わりがパックの台詞で、二つの作品が円環的に結びついているように感じられた。
劇の始まりで「序詞役」が登場し、パックを思い出させる台詞で開幕し、終わりはまさにパックのエピローグの台詞そのままであった。
この劇の祝宴性を感じさせたのは、歌と音楽で始まる開演であった。
キューリオを演じる鈴木里菜がバックミュージックに合わせて心地よげに歌い、上手側にはCastor組と思われる役者たちが実際に演奏しているかのように模造の楽器を操っている。その場面がかなり続いて、舞台下手奥側からオーシーノ公爵が登場すると一旦音楽は止まるが、「音楽が恋の糧なら、続けてくれ」というオーシーノ公爵の言葉で再び音楽が続く。
『十二夜』は、この冒頭のオーシーノ公爵の台詞に表象されるように、音楽祝祭劇的なところがあり、小林勝也が演出するこの舞台もふんだんにバックミュジュークとしての音楽が要所々々に使用され、マルヴォーリオが手紙を拾う場面ではベートーヴェンの「運命」の出足の部分が鳴り響き、コミカルさを増幅する。
キャスティング・リストを見ると、CastorとPolluxは別々の俳優が演じることになっているが、オーシーノ公爵の廷臣キューリオとヴァレンタイン役のみが、鈴木里菜と加藤真伎が交互に役を変えて出演している。シェイクスピア劇では当時の慣習から女優の登場が少ないことから、この舞台では女性が男役を演じることが多くなっている。
キャスティングで注目されたのは、フェステを二人の女優に前半部と後半部に分けて演じさせていることと、Cantorではセバスチャンを女性の井上留菜が演じ、Polluxでは男性の斎藤凪に演じさせていたことである。この違いを両方見較べてみたいと思った。
祝祭性を大いに感じさせたのは、最後に二組のカップルが誕生して祝宴のダンスが踊られる場面。人数を数えていないので確かな事は言えないが、この踊りの場面には恐らくCantor組も入って卒業生全員の踊りとなっていたのではないかと思う。
この踊りで終って最後のフェステの唄はないのかと思っていたら、きっちりとあって、最後は序詞役がパックのエピローグの台詞を語って終演となった。
卒業発表会ということで、出演者の関係者の多くで座席は満席であったが、自分の座席の位置からすると多分ギリギリ予約セーフであったようだ。すし詰めの座席で窮屈な感じで座り心地はよくなかったが、場内の熱気で途中何度か睡魔に襲われ、場面の見過ごしと台詞の聞き逃しが結構あった。でも、自分はこういう雰囲気が好きだ。
上演時間は、途中10分間の休憩を入れて、2時間35分。
訳/河合祥一郎、演出/小林勝也
2月11日(日)13時開演、文学座アトリエ、料金:1000円、座席:F列21番
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