滋企画公演 『オセロー』                 No. 2024-006

 開場前に並んでいるとき、劇場の外壁に貼られている張り紙に気が付いて読むと、この「こまばアゴラ劇場」が2024年5月末を以て閉館されることが書かれてあった。コロナ禍と物価高騰、維持費の負担増で債務超過に陥る前に苦渋の決断という。昨年5月にコロナが5類に移行されてから徐々に演劇界も復活してきて、チラシ情報もだいぶ入るようになってきた。今回の滋企画『オセロー』も別の舞台観劇で入手したチラシ情報によって知った。
 チラシに載っている出演者は、女性4名に滋企画の佐藤滋のわずか5名。それだけでオリジナルとは異なる劇が想像されたが、観劇当日のパンフレットの配役を見ると、佐藤滋のオセロー、伊藤沙保のイアーゴーとデズデモーナの二役、そして他の3人はロダリーゴーを演じ、各自がそれぞれにキャシオー、エミリア、ビアンカの役となっていた。
 開演と共に、第1幕第1場のロダリーゴーとイアーゴーの会話が交わされるのは真っ暗なままの舞台。
 デズデモーナの失踪とオセローとの結婚が告げられたブラバンショーは佐藤滋が背中を見せる姿で演じ、オセローの役では正面を向く。
 ロダリーゴーを3人の女優で演じることでギリシア悲劇のコロスの役割を担い、舞台の説明役、進行役ともなっている。
 翻訳は松岡和子訳となっているが、台詞の口調や言葉遣いは翻訳の語調とは全く異なっている。その台詞の口調が自分の波長とは全く相容れないため口で、時にノイズとしか聞こえなかった。
 ロダリーゴー役の3人は、赤いジャージの体育着姿であったのも、そのため口を体現するものであった。
 シェイクスピアの台詞劇としての劇が何か台無しにされたような不快感を感じながら、半ば目をつぶって観劇することが多かった。台詞への不満から、せっかくの面白い構成・着想の魅力を感じながらも自分とは波長の合わない舞台であった。
 上演時間は、休憩なしで2時間。

 

訳/松岡和子、演出/ニシサトシ
2月3日(土)13時開演、こまばアゴラ劇場、チケット:4000円、全席自由


>> 目次へ