劇団AUN有志によるユニット「Dialogue!」第三弾公演
          『「セロス」 celos ― 緑色の目の怪物』      
  No. 2024-005

 「Dialogue!× SHAKESPEARE #3」のタイトル「セロス」はスペイン語で「欲望」の意味だという。
 リオンティーズの友人キャシオーをもてなしての賑やかなフラメンコの踊りからこの劇は始まる。舞台中央でそのフラメンコを魅力的に踊っているのは、ハーマイオニ。
 踊りが終わった後、イアーゴーがリオンティーズにハーマイオニとキャシオーの二人の仲が怪しいと耳打ちする。
 このように舞台は、『冬物語』と『オセロー』が最初から交錯した形で展開していく。
 嫉妬にかられたリオンティーズはイアーゴーに友人のキャシオー殺害を命じる。しかし、このときイアーゴーは、カミローとなってキャシオーを逃亡させる。一方、ハーマイオニはリオンティーズによって追放される。
 ハーマイオニは嫉妬の妄想にかられたリオンティーズの余りの変貌に、「ああ、あれほど気高いお心が、このように無残に!」とオフィーリアの台詞を語る。
 緊張した舞台の進行途中で、劇の稽古場捜しに地面の測量に、『夏の夜の夢』のクインスが登場。劇中劇は『ピラマスとシスビー』から変って『オセロー』の最後の場面が演じられる。その劇中劇に筋書きを加えさせるのは、リオンティーズの手から逃れて、変装して戻ってきたキャシオー。
 『オセロー』の芝居が演じられ、デズデモーナが殺される場面にハーマイオニが登場して、舞台上を横切っていく。その姿を見て驚愕するリオンティーズは、『ハムレット』のクローディアスから、バンクオーを殺したマクベスとなっている。そして、イアーゴーは、「ハーマイオニに眠りはない。イアーゴーは眠りを殺した!」とマクベスに変貌。
 ハーマイオニは追放されたのではなく、実はリオンティーズに殺されていたのであった。その一部始終を見ていたのは、リオンティーズの息子マミリアス。すべての悪計が暴露されたイアーゴーは、最後にマミリアスによって刺し殺される。
 このように舞台は、『冬物語』と『オセロー』の二つの悲劇を軸にして、『ハムレット』『マクベス』『リア王』などの四大悲劇に加え、『夏の夜の夢』『お気に召すまま』、さらに『ヘンリー八世』『ヴェニスの商人』『ヘンリー四世』『終わりよければすべてよし』など、シェイクスピアの作品10作の台詞や場面が織り込まれて進行していく。
 その台詞や場面がシェイクスピアのどの作品であるかを頭の中で思い起こしながら観劇するので結構疲れてしまったが、それらの折り込みが巧みで、シェイクスピアのてんこ盛りの面白さには十二分に堪能させてもらった。
 出演者と主な登場人物名とその役どころは、リオンティーズに松尾竜兵、イアーゴーに齊藤慎平、キャシオーに河村岳司、ハーマイオニに近藤陽子、マミリアスに悠木つかさ、アンティゴナスに星和利、エミリアに坂田周子、ボトムに伊藤大貴、クインスに金子久美子の9名。シェイクスピアの作品上演を専門とする劇団AUNのメンバーの台詞力にも十分堪能させてもらった。
 上演時間は、休憩なしで1時間30分。

 

翻訳/小田島雄志、構成・演出/沢海陽子
1月27日(土)13時開演、新宿スターフィールド、チケット:4500円、全席自由


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