2023年観劇日記
 
   劇団メグロコミュニティシアター 第16回公演 『テンペスト』     No. 2023-021

 シェイクスピア劇を初めて観る人にも分かりやすい、テキストに忠実な構成と演出。
 これまでに演劇の経験のない人たちの参加を含めて出演者の楽しんでいる様子が伝わってくる舞台で、観客も出演者の友人知人が大半で、出演者と観客の一体感が会場の雰囲気を盛り上げているのが感じられた。
 道化役のトリンキュローとステファノ―以外の出演者は、主役のプロスペローをはじめ全員が女性。
 主役のプロスペローを演じた黒田貴子の演技は一言でいえば、クールであった。そのクールさは日常会話的に使われる意味での「格好良さ」と、本来の意味の「冷ややかな、冷静な、沈着な」、そして「知的さ」を感じさせるものであった。
 プロスペローの娘ミランダを演じた舟木優は純白の衣装が注意を引き、出演そのものを楽しんでいる気持ちが伝わってくる初々しさがその表情に現れていた。
 特に印象に残ったのは、怪物のキャリバン役。青い筒状のパンツをはいて、海藻と木の葉を混ぜ合わせて作ったパッチワークのようなマントをはおり、目の周りには隈取りをし、口の周りは真っ赤な口紅で縁取りをし、髪はぼさぼさに乱れたその容姿は、女性が演じているせいもあってか、自分にはキャリバンというより母親のシコラクスを感じさせる風貌であった。そのキャリバンを演じた岸本聖美は、その異様な怪物を演じているのを楽しんでいるような熱演であった。
 その他の主な出演者は、エアリエルに中丸朋美、トリンキュローに高野圭一郎、ステファノ―に竹谷和也など、総勢12名。
 プロスペローの最後のエピローグの台詞が省かれたのは、演出上での意図があってかどうかは分からないが、、最後に聞きたかった台詞がなく、何となく画竜点睛を欠いているようで、惜しい気がした。
 上演時間は、休憩なしで1時間45分。


翻訳/小田島雄志、構成演出/牛尾穂積
9月17日(日)14時開演、ウッディシアター中目黒、料金:2500円、全席自由


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