2022年観劇日記
 
  新地球座公演 荒井良雄娑翁劇場 第33回
  朗読劇 『ヘンリー四世・第二部 —フォルスタッフ糞闘するの巻』    
 No. 2022-025

 前回の第一部では、王位に就いてからというもの内乱に苦しむヘンリー四世が、息子のハル王子の放蕩に悩む親子の対立に焦点を当て、フォルスタッフの登場しない構成にしたが、この第二部ではフォルスタッフを中心にしてタイトルも「奮闘」ではなく「糞闘」として構成した。そのため、フォルスタッフの出番が多く、それを演じる久野壱弘はほとんど出ずっぱりとなったが、期待に応える文字通り「糞闘」の好演であった。
 それを支える他の出演者がハル王子を演じる菊地真之を除き、全員が一人3役を演じ、その声色の演じ分けが非常にうまくなされていて、今回の出演者人の5人のアンサンブルは絶妙の組み合わせであったと感じ入った。
 演出者の高橋正彦が裁判長ガスコイン、地方判事サイレンス、そしてタイトルロールのヘンリー四世を演じ、倉橋秀美がクイックリー、地方判事シャロー、ランカスター公ジョン王子、そして西村正嗣が侍童、ピート、ピストルを演じるかたわら、各場面の転換ごとにピアノの間奏を入れたことで、場の転換がクリアとなった。
 高橋正彦の裁判長とヘンリー四世の真逆の役はサイレンスでその声の使い分けが絶妙、倉橋秀美のクイックリーの早口の喋り口と老シャロー判事ののんびりした喋り方の真逆の人物、それに四角四面のジョン王子の演じ分けといった具合に、出演者が真逆の複数の登場人物を演じる声色を聞く楽しみ、面白さを十二分に満喫させてくれた。また、西村正嗣の台詞の語りもクリアですがすがしい若さを感じた。
 主演のフォルスタッフを演じた久野壱弘の熱演もさることながら、ハル王子を演じた菊地真之の台詞力も聴きごたえのあるうまさの醍醐味を感じさせてくれた。
 今日は終日、あいにくと冷たい雨の一日であったが、それでも多くの観客が来られていたのも、主催者側の一員として嬉しいことであった。

 

坪内逍遥訳、荒井良雄監修、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
11月23日(水)18時30分開演、喫茶ヴィオロンにて


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