2022年観劇日記
 
   G. Garage第4回公演 『リチャード二世』           No. 2022-015

異色・異能の出演者の演技を楽しむ

 会場はビルの地下1階にあり、階段を降りてすぐ右手側、階段を背にした席が「東」の席で1列のみ。中央の舞台をはさんで向かい側が「西」の席、舞台の正面に面している席が多分「南」の席で、客席でコの字型に囲まれた舞台の構造は、携帯電話(ガラケイ)の蓋を90度にあげた形のホリゾントと、京都の竜安寺を思わせる白色の舞台上には、石庭を表象するかのような飴色の擬似岩石が一つ、一段低くなった舞台の周囲には、白い砂利石が敷き詰められている。そして、天井から細い糸で、中世の兜(というよりヘルメットのよう)が逆さに吊るされているのが対称的に見える。そのヘルメットは上演中、役目を終えると上に引き上げられ、必要な時にだけ降りてくる仕掛けとなっている。
 英国史劇に登場する人物関係は、同じ人物がいく通りもの呼称で呼ばれるので、人物の名前表記からして戸惑わせるため、開演に先立って主演で主宰者の河内大和が、『リチャード二世』に登場する人物の相関関係をマエセツの口上として語る。それが終わると、庭師を演じるエミ・エレオノーラの縦笛演奏と語りに合わせ、清水寛二による能風な所作によっての始まりは、プロローグとしての趣を感じさせた後、王リチャード二世とジョン・オブ・ゴーントほか貴族一同が登場し、ボリングブルックとモーブレーの対決の場が展開していく。
 出演者の人数の関係もあってか、登場人物の役割で一部原作と異なるものがあり、そこに演出者の工夫と意図を感じさせるものがあった。それは、リチャードの側近であり寵愛を受けていた3人の内の一人、バゴットの役割である。バゴットは、ボリングブルックに捉えられ、ブッシーとともに処刑されようとするが、原作では彼はボリングブルックが攻めてきたとき、アイルランドに遠征しているリチャード王のもとに逃走してその場にはいない。それで原作ではブッシーとグリーンが処刑されることになっているが、グリーンはこの劇では登場しないので、その代わりに、ブッシーとバゴットが処刑されようとするのだが、バゴットはリチャードを裏切ることで命拾いし、後に原作にそってヨーク公の息子オーマール公がグラスター公殺害に関係する張本人であることを糾弾する。そして、牢獄に囚われた王リチャードを殺害するのはエクストンではなくバゴットに置き換えられているのが大きな違いとなっている。
 河内大和主演の『リチャード二世』の最大の特徴は異色・異能の出演者の顔ぶれにあるといっても過言ではなかった。そして、この劇の見どころはその異色・異能の出演者の演技・台詞を聞き、観るところにあると言ってもよい。
 リチャード二世を演じる河内大和を筆頭にして、王に敵対する後のヘンリー四世となるボリングブルックには、さいたまネクスト・シアター出身の鈴木彰紀、バゴットには劇団AUNの齊藤慎平、庭師のほかグロスター公爵夫人とヨーク公爵夫人を演じるエミ・エレオノーラ、ノーフォーク公爵トマス・モーブレーと王妃イザベルを演じる真以美、ノーサンバランド伯の松之木天辺、ホットスパーの風間晋之介、ブッシーとカーライルの司教を演じる野村龍一、オーマール公爵に桜井翔二郎、庭師とラカスタ―公爵ジョン・オブ・ゴーントを演じる能役者の清水寛二、総勢10名の出演者である。
 上演時間は、途中10分間の休憩をはさんで、2時間30分。

 

翻訳/松岡和子、演出/河内大和、楽曲提供/mama!milk、エミ・エレオノーラ
8月14日(日)12時開演、新井薬師、ウエストエンドスタジオ
チケット:6500円、座席:東1列5番


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