新型コロナウィルス感染対策の影響で、実に1年半ぶりの再開である。
まだ感染が収束しているわけでもないので、観客数は自主規制して10余名。
今回の作品は、2017年6月の第13回公演で一度上演しており、今回は一部キャストを入れ替えての再演である。フォルスタッフの久野壱弘、フォード夫人の森秋子、クィックリーの倉橋秀美、フォードの高橋正彦は変らず、ペイジ夫人が柳沢迪子から白井真木に、ピストルが高橋正彦から西村正嗣に変わって1名増え、総勢6名の出演。
冒頭部、ガーター館の一室、久野壱弘のフォルスタッフと西村正嗣のピストルとの間で交わされる台詞から引き込まれていった。
出演者それぞれの持ち味が遺憾なく発揮されて最初から最後まで楽しませてもらったが、最後のエンディングの締めが特に素晴らしかった。
ウィンザーの森の中で、妖精たちに変装した一同がフォルスタッフの周りで、「あさましや 邪(よこし)ま恋慕(れんぼ)!・・・抓れや、焼けや、引きずり回せ。火消えて、月星の沈むまで」を、フォード夫人やペイジ夫人などが一区切りずつ歌い、最後にフォードが、「あなたは、ブルックへの約束だけはやっぱりお守りなすったんですよ。なぜなら、あの男は今夜フォードのおかみさんと寝ますよ」と言ってこの台本は終わらせているのだが、この演出では、再度、「あさましや 邪まな恋慕!」の歌を、今度は最初のこの部分と、最後の「火消えて、月星の沈むまで」をフォルスタッフに言わせ、その他の中の部分を同じように一区切りずつ他の出演者が言う。
このことでこの劇の終わりに余韻と余情をもたせることになり、この演出に喝采!!
いつもながらのことであるが、台本構成者として、台本の一部削除や追加をどのようにするかに興味があるのだが、今回は場面を生き生きと活写するために、最初の方でフォルスタッフとピストルの台詞に追加がなされており、その部分での今回新たに参加した西村君が俄然輝きを増して聴き入らせてくれた。
朗読劇ながらも目をつぶって聴いていると、舞台演技を見るような、舞台想像をたくましくする台詞力で、ひと時を楽しませてもらった。
坪内逍遥訳、荒井良雄監修、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
5月25日(水))18時30分開演、喫茶ヴィオロンにて
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